2話 ヘルゾディックvsカゲヨシ 【始まり】
『ワールド・ゲーム』
一つ、制限時間は一時間。バトルステージは気が生い茂っている森とする。
二つ、制限時間を過ぎ、二人以上が生き残っていた場合、その場で全員は死ぬ。
三つ、負けた人間は自分と自分の世界もろとも消える。
四つ、このバトルロワイアルはそれぞれの世界で放送されている。
五つ、神の慈悲により、負ける時は数秒間、自分の世界の人間の言葉が届く。
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支配者の男は手に取っていた『ワールド・ゲーム』の紙を投げ捨て、「ちっ」っと舌打ちをしていた。
「くっ、なぜ我がゴミどもの見世物にならなければならんのだ!!大体、あの男はなんだ急に七人の代表を名乗り、このバトルロワイアルを始めるとは……」
この男の名はヘルゾディック。世界を支配している正真正銘の支配者だ。分かりやすく言えば魔王に近いのだろう。
そんな彼は今、顔を怒りに染めていた。それはまっとうな感想だろう、むしろこれで怒らない人間がいるのであれば、その人間は善人すぎる存在であろう。
そんなことを口に出し、頭でも出していると、唐突になんの脈絡もなくヘルゾディックの腕が吹き飛んだ。
急展開、しかし、落ち着いた様子で、落ちた腕には目もくれず、ヘルゾディックは目の前に広がる木々を見て、一言。
「誰だ、我に対し牙を突き立ててくるものは……。それは死にたいと我に言ってきているのか。」
すると、一人の男が木々の間を――いや、木々をすり抜けてこちらに歩いてきた。その男は黒い服で身をまとっており、声で性別を判断するしかないほどだった。
「俺の名はカゲヨシ。……お前は危険な存在。殺るなら早くせねばな。」
「そうか、カゲヨシか、ゴミみたいな名だな。……では貴様の望み通り死ぬといい。」
次の瞬間、カゲヨシが立っていた場所が様々な色を出し、地を揺るがした。しかし、カゲヨシは冷や汗をかきながら、ヘルゾディックの後ろに回っており、それをヘルゾディックはそれが分かっていたのか、カゲヨシをゴミを見る目で見ていた。
「お前、それは何だ……っ」
カゲヨシは震える指を抑え、ヘルゾディックの後ろを指さした。そこには百を超える人間が、はりつけにされたように顔を歪めて空中に浮いていた。
「これか?これはゴミをリサイクルして使っているに過ぎん。……ああ、安心しろ。これは我の能力ではない。わけあって自分の能力は使えんがな。……ん、もしやこのゴミをどうやって召喚したのかを聞いているのか、これはゴミの一つの能力だ。たりない貴様の脳でも理解できたか?」
カゲヨシはその身を恐怖によって震わせていた。目の前の男は浮いている人間をゴミと呼び、その人間の能力を使用しているのだ。そして、もっとも恐ろしいのがその人間にはまだ意識があることだ。それを知ってか知らずかヘルゾディックはなおも言葉を続ける。
「ふ、ここまで情報を明かしたことを不審に思っているのか?だが安心しろ、我はフェアに戦いたいだけだ。貴様の能力は――『結果だけを得る能力』だろ。まあゴミ共の能力、『理解力上昇能力』と『過程を作り見る能力』で導き出した答えだがな。我だけ能力を知っていると、我が有利だからな。」
「どうせの戦闘、楽しまねばな……」と言いながら、ヘルゾディックは淡々と言った。
「さあ、かかってくるがいい!!貴様を殺してやる。せいぜい俺を楽しませろ!!」
ヘルゾディックは腕を組み、見下した目でカゲヨシを見ていた。
カゲヨシは体を震わせるしかなかった。
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