10話 ある男の同情
筆休み作品でも作ろうかな。……面倒なだけか。
なんだろうか。これを見て何を思うのがいいのだろうか。
少女が村を守るために自分が犠牲になった勇気に対する賞賛。
少女が人間を皆殺しにしたという事実に対する恐怖心。
これがだいたいの人間の反応だろう。俺もそう思う。だが……俺はその思いを消してしまうほどのある感情が心に留まった。
かわいそう……。同情心だ。
少女は本当に平凡な少女だったのだろう、それこそ、ゲームに出るなら村人Aになるであろう普通の少女なのだろう。ただ、二つ。たった二つでその人生は大きく変わった。変わった価値観と能力の二つだ。
少女は正義にあこがれていた。なぜかは知らないし、知りたいとも思わない。もはや手遅れだからだ。
簡単に要約するとこうだ。
少女は村人を守るために、代わりに自分が一人で戦場へと赴いた。正義のヒーロー気取りで。そして、少女は敵の魔族をたくさん殺した。舐めてかかってくる敵。優しい敵。命乞いをする敵。家族を思って死んでいく敵。少女は最初こそ気持ちは楽だったのだろう、しかし、どんどんと壊れていった。少女は怖くなった。だから正義と言われている国に永遠の忠誠を誓って自分を正当化しようとした。
だが、戦いとは人を壊していく拷問以上の苦痛を与える精神攻撃だ。少女は戦っていくほど怖くなった。本当に自分は正義なのか違うのか、自分は正しいのか間違っているのか。分からなくなった。
だから、少女は自分で考えるのを辞めた。周りの情報だけを信じた。あれが正義だと言われたらそちらに味方し、こっちが悪だといえば殲滅した。
人は言うだろう。だからってここまでにはならないだろう。と
俺はそういう奴に言ってやりたい。なぜお前はそう言い切れるのか。なぜお前は理想と現実を見ないのか。なぜ自分は経験したことないことを否定するのか。
人間とは身勝手な生き物だ。理想と現実を混ぜて世界を見て、声は上げるのに手は差し出さず、自分に不利益がくるものには目を向けない。
少女は若くして、本当に若い時にそれを知ってしまった、見てしまった、感じてしまった。だから最後、あるはずのブレーキが無くなり、人間を殺しまわる殺戮者となった。
くだらない。そう言えたらいったいどれほど楽だろうか、だが言えない。俺は少女が――クロリィが経験してきたことを代弁することができない。だから何も言えない。
俺には同情することしかできない。それ以上のことをしてはいけない。
「この調子だと俺の過去も見られてるんだろうな、変なシーンがないことを祈ろう。」
こうやってお気楽に話を切り替えようとしている俺はダサいんだろうな。
俺は自分自身に軽く苦笑した。
うえーあー。(疲れた)
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