量子力学、全員集合!?
俺は大学で物理学を専攻している。今日はラジオ局でハガキ整理のバイト、今時ハガキのみの受付って昭和かよって思うけど、平日の昼間の番組聴いてるのってお年寄りがほとんどだろうから仕方ないか。
「なあ、これ見てみ?」
隣りで作業している高屋君に、ハガキ3枚の差出人の名前を差してやった。
「何? 名前がどうかした?」
高屋君は差出人の名前を見て即座に気づいた。
「面白いだろ?」
「ああそうか、この3人の名前か」
「さすがは高屋君だね、気づくのが早いよ」
「北里に渋沢に、それと津田って。新札の顔になる?」
「いやいや、そうじゃなくて。下の名前だよ」
高屋君は首をかしげた。
「下の名前? チカラにマナブ? それとリョウコ、これが何?」
「だから、量子と力と学をつなげてみ?」
「は? リョウコチカラマナブ? アニメのキャラか何か?」
俺はため息をもらした。
「量子力学! 分かんなかった?」
「いや、俺文系だからさ、理科系苦手なんだよね」
高屋君は「バカバカしい」とばかりに作業に集中した。
「あ、そう」
俺はこのネタをゼミの連中に自慢してやろうと、高屋君に分からないようにニヤニヤしながら作業を続けた。
〈終〉
皆様、いつもご愛読いただきありがとうございます。
今回は超短編作品を投稿しました。
前作同様、たくさんの方にお読みいただけたら幸いです。
本作の他、
良寛さんにはなれない
阪下駅のおにぎり屋
先輩を高杉クンと呼んだ夏
ふわふわ戦士アンドマン
後輩のオモチャ
もよろしくおねがいいたしします。