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Sea Pranet  作者: 一般的なマイノリティー
第一部:トマ村にて
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第五話

幼子は、甲高い悲鳴をワァーっと上げて起き上がった。彼の両親達は直ぐに何事かと身構えたものの、先程の医師の言葉や特に目立った外傷が無い事実等から悪い夢でも見たのだろうと当たりを付け、そして尋ねた。


「大丈夫?何か悪い夢でも見たのー?」


アナトマは額を顔に近付け、目と目を合わせて上目遣いに抱き抱えた幼子へとそう尋ねた。


それを聞いた幼子は、泣き腫らした目をケレトマに合わせながらしかし彼の母の仕草が面白かったのかどこか落ち着いた様子であった。


そうして暫く母子の見つめ合いが続いた後、幼子は意を決した様に口を開いた。


「あのねあのね……でっかいやりがね。こーんなに大きかったの。それで、なんかたたかえって、僕、怖くて……怖くてっ……うぅ」


幼さゆえに言葉が足りず、身振り手振りを用いて説明しようとしたものの、感情が抑えきれずに泣き出してしまう。

幼い頃は自分もそうであったと、息子を怖がらせないようにアナトマの後ろにいたケレトマはしみじみとそう思い。

アナトマの方も、その感情に対して理解を示し静かに微笑んで幼子が泣き止むのを待った。


我々の時間感覚で五分ほど経った時には、幼子は泣きやみ、少し説教を受けていた。


「無闇に色々なものを口にしてはいけませんよ。口にしていいものは食物とお薬だけ、ですからね。」


アナトマが顰めた表情でおでこに指を当ててそう言うと、幼子は先程見た悪夢を思い出してあんな思いは二度とすまいと仕草を真似して復唱した。


「お口にしていいものは、食物とお薬だけ。だよね。わかったー……」


言い切ったあと肩を落とした幼子に対して、アナトマは顔を綻ばせ


「分かれば良いのよ…、さて、お腹も空いたでしょう?食事にしましょうか。」


そういい、部屋を後にするアナトマ。調理をしに調理部屋へと向かったようだった。


残されたのはケレトマと幼子。


幼子は、調理部屋で調理されているテュークの匂いを感じ取ったあとに真剣な顔つきでケレトマへと向き合い、こう言った。


「お父さん、やりってどう使うの?僕、わからないんだ。だから怖かったの。だから、おしえてくれる?」


ケレトマは息子の言葉に少しの間愕然としたものの、直ぐにそんなものかと思い直す。

自分達マーマン自体が戦闘を種族単位での生業としているのだから当然だろうと。


結果的にケレトマは幼子の願いを受け入れ、猟に行った後に教えるつもりだったことを前もって教えることとした。


「あぁ、良いだろう。先ずは、食事だ。」


言葉足らずながら息子の意にそぐおうとする彼の気持ちが乗った言葉に、幼子は満面の笑みを浮かべてウンと応えた。

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