表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

悲しみは乗り越えていける。

  涙


涙は出すものではなく流れるものなんだろう。


この日もとても暖かく晴天だった。

心が空っぽのまま、おかあさんの葬式がいつの間にか終わっていた。

とても暖かく、澄み渡った青空を黙ってみていた。


今日の空はまるでおかあさんのよう。


そんなぼくの所におじさんがやってきた。

おじさんは、ぼくのことが心配だったのだろう。


「おかあさんはな、つらくても笑顔だったのはお前がいたからや。いつも言っとった、『あの子はあの人との大切な宝や』って。お前のかあさんはすげーな」


ぼくの顔をのぞきながら、おじさんは優しい顔で言った。

いつもいかつい顔で、子どもから怖がられるおじさんは、この時ばかりは子供っぽく無邪気に笑っていた。

目の周りを赤く染めた顔で。


その笑顔とおかあさんの笑顔が重なった気がした。

自分も泣いたのに笑顔を見せるところが、姉弟だからこそ似ているんだろうな。


その時初めて涙が出た。

別に我慢していたわけではないし、悲しいくないわけでもない。

大声で泣きわめくわけでもなく、悲しくて顔がゆがむわけでもなく、ただただおじさんの顔をみながら涙が頬を伝っていった。


やっと実感したのだろう、おかあさんがいなくなったことに、もう二度と会うことができなくなったことに。


そんなぼくを見たおじさんは、少し驚きながらも優しい顔で抱きしめてくれた。

その腕の中は、おかあさんみたいに柔らかくはないけれど、とても温かかった。




おかあさん、ぼくは大丈夫です。

おとうさんのもとに行ってあげてください、もうさみしくないように。

あなたと過ごした日々は、幸せでした。

ここまで育ててくれてありがとう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ