別れ
人との関係を大切にしよう
別れ
人との別れはいつくるのか分からないことを知った。
これはとても暖かい春、小学6年生の時のこと。
いつも通りぼくは学校に来ていた。
何も変わらないいつもの毎日、その日は晴天だった。
授業の準備をしていたぼくに、先生が慌ててそばまで来た。
「早く病院に行きなさい。おかあさんが倒れたって」
そう聞いた時、頭の中が真っ白になった。
朝、笑顔でぼくを見送ってくれたおかあさん。
いつもと変わらない日だったはずなのに。
それからどうやって病院に来たのか分からない。
いつの間にか、おかあさんの病室の前まで来ていた。
ぼくは、扉をゆっくりと開けた。
そこには、お医者さんらしき白衣を着た人、看護師さんらしき女の人、そしてベットの上に寝ている、顔の上に白い布をかぶせられたおかあさんの姿。
何にも考えられなかった、何にも考えたくなかった。
お医者様が何かいっているが、ぼくは黙っておかあさんのもとに歩く。
看護師さんが布を取ってくれた。
間違いなくおかあさんだ。
すごく穏やかで、今にも起きだしてしまいそうなそんな顔だった。
ただただ黙っておかあさんの顔を見ていた。
何も考えることができないって、こういう事をいうんだろう。
ぼくがおかあさんが見ている間に、病院がおじさんにも連絡をしていたのだろう、おじさんがそばに来てぼくを抱きしめてくれた。
抱きしめられてもなんとも思わない、涙もなぜか出てこない。
暖かい風が、窓を開けた病室に入ってくる。
おかあさん、外はとても気持ちがいいよ。
ねぇ聞いてよ、ぼくの声を。