出会い
出会いはどこにあるのかわからない。
出会い
ぼくのおとうさんとおかあさんはお互いを思いあっていた。
これはおとうさんの写真を見ているときにふと思った時のこと。
ぼくは、おとうさんを写真でしか見たことがない。
なぜならおとうさんは、ぼくが生まれる前に亡くなっているから。
お医者さんだったおとうさんは、何人もの患者さんを救ってきたんだって、お母さんに教えてもらったことがある。
そんな話を聞いて、ふと疑問に思ったことがある。
おとうさんとおかあさんは、一体どこで出会ったんだろう。
人との出会いはいつどんな時、どこで起きるかわからない。
これは、おかあさんに教えてもらったこと。
いろいろ考えていくうちに、ものすごく気になった。
気になって、気になって、お母さんに聞いてみたんだ。
おかあさんは、少し照れながら話してくれた。
それは、おかあさんがまだ高校生だった頃。
おかあさんは少し、ぐれていたそうだ。
いわゆるあれだったと、おかあさんははぐらかした。
なんとなくわかったから、あえてぼくはなにも言わなかった。
細い路地で、おかあさんは怪我をしていたそうだ。
そんな時、何も言わずおかあさんの手当をしてくれたのが、当時医大生だったおとうさんだった。
おかあさんは、そんなお父さんの治療していた手を振りほどいた。
当時のおかあさんにとっては、一人になりたかったんだって。
でもおとうさんは、そんあおかあさんを無視し、治療をしてくれたんだって。
「なんでこんなことすんだよ」
無言で治療をしてくれたおとうさんに対して、おかあさんが言えたことはそれだけだったそうだ。
「ケガしたやつをほっとけるわけないだろ」
不愛想におとうさんはそう言ったそうだ。
この時おかあさんは泣きそうになったって、照れながら教えてくれた。
これがおかあさんとおとうさんの初めての出会いだそうだ。
それからいろいろあって一緒になったらしい。
そのいろいろが気になったのだが、照れたおかあさんに話を切り上げられてしまった。
いつかほかの話も聞いてみたいな。