お人よし
人助けはなかなかできないものだ
お人よし
ぼくのおかあさんは誰よりもお人よしだ。
これは、ぼくとおかあさんがいつだったか、買い物に出かけた時だった。
この日は、スーパーで卵がお得で、ぼくとおかあさんで一人一つの卵を二人で一つずつ買う作戦で、出かけていた。
スーパーに行く途中で、おばあさんが道に迷い困っていた。
ぼくたちもスーパーに急いでいたから、通り過ぎるかと思っていた。
けど、おかあさんは立ち止まり、おばあさんを助けた。道も知っている道だったので、そこまで案内をした。
その後、さっきよりも早歩きでスーパーを目指していた。
すると今度は、迷子の子どもがいた。
またおかあさんは、子どもの所に行き、警察署まで連れて行った。
さっきよりももっと速いスピードで、スーパーまで急いだ結果、卵は買えなかった。
少し残念そうに笑うおかあさんに、ぼくはなぜ助けたのか聞いてみた。
「見捨てるのは簡単だ。だけど助けるのは難しい。誰かを助けると、それは後から自分にかえってくる。見捨てるんじゃなくて、助ける人間になりな」
そう言ったおかあさんの顔は、輝いて見えた。
夕焼けに照らされた道をぼくとかあさんは、手をつないで家に帰った。
助けることは、決して簡単なことではないことを、ぼくは学んだ。
おかあさんのようにはなれないけど、誰かを助けられる存在になりたいと深く思った。