バカだ
こんな人が理想だ。
バカだ
ぼくのおかあさんはバカと言われている。
これは、ぼくが4歳の頃の話。
ぼくのおかあさんはともだちが多い。いつも知らない人が家に遊びに来る。
この日は、あかあさんのともだちと一緒に、外でバーベキューをしていた。
周りの人たちはみんなちょっと怖そうな顔ばかりだ。
今になって思うが、ぼくはよく怖がらなかったなとこの日の自分に言いたい。
この時の自分は、少しおとなしい子どもで、よく怖い顔の人が家を出入りしていたからこそ、怖がらなかったのだろう。
怖い顔の人でも、みんなやさしい人ばかりだった。
話を戻そう。
みんなでするバーベキューはすごく楽しかった。
みんな笑顔でどんちゃん騒ぎで、ぼくも少し浮かれ気分だった。
そんな時、一人の男の人が、ぼくの所に来てこう言った。
「お前のかあさんはバカだよな」
そんなことを言われたぼくは、ものすごく怒った気がする。
ここら辺は曖昧で、よくわからない。でもこの時のぼくは、保育園の先生からバカの言葉は悪い言葉だと、教えてもらっていた。
だからこそ、その男にむかって怒った。
こんなぼくを見た周りの人たちは、みんな大爆笑だった。
なんで大爆笑なのかわからず、戸惑っているぼくを男の人は
「すまなかったな。」
と笑いながら、ぼくの頭を乱暴に撫でた。
バカと言う言葉は悪い言葉ではあるが、この時のバカと言う言葉は、おかあさんにとって最高の誉め言葉だった。
だって、バカと言った男の人も周りの人たちも、みんなおかあさんを尊敬していたんだ。
その証拠に、みんなが楽しそうに面白そうに、おかあさんの話をしていたのだから。
誰からでも愛すべきバカになりたいと思える出来事だった。