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ただの村人達のお話  作者: 隣の家の団子屋
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初めての一人でのお仕事です

初作品でつたない文章ですが最後まで見ていただければ幸いです。

ーーーーーー・・・・・・

 柔らかい風が頬を撫で、若草の香りを鼻孔をくすぐる。木々が風に揺れる音が心地よい。このまま眠ってしまえばどんなに心地よいだろうか。ーーーいやこのまま眠ってしまおうか・・・。そう思ったが、かけらほどに残った理性を必死で絞り出して重たいまぶたを開く。木々の木漏れ日がとても美しい。後ろ髪が惹かれる気持ちをグッと堪えて立ち上がる。


16歳になったケイは初めて一人で村の外へ出たのだった。自分の脇に置いていた道具を拾いつつ村の長であるオババの言葉を思い出す。


ーーー「いいかい...ケイ、村のしきたりとして16歳になったら一人で仕事をこなさなければならない。お前の家は父親が狩人だから小さい頃から野山をかけているのは知っているがくれぐれも気をつけるんだよ...。」


オババがなぜここまで心配しているかをケイは知っていた。基本狩人は二人一組で仕事をこなすのが普通である。だがしかし今回は例外的に村のしきたりで一人で村の外に出なければならない。一人では不測の事態に対処できない。そこを心配してくれたのであろう。


ケイはオババの優しい声色が好きだった。昔は素直に自分の気持ちを伝えられたが気恥ずかしくて、ついそっけない態度をとってしまうのがケイの最近の悩みであった。「(今日一日頑張ってオババに褒めてもらおう!)」心の中でそう言いながら気合を入れ直してケイは歩き出した。


 やることは幼い頃から繰り返してきたことと同じことをするだけだ。ケイは懐にしまっていた懐中時計を覗き込んだ時間はお昼を少し過ぎたくらいであろうか。時間を確認し木の上に登る。木には木の板が貼り付けられていてスムーズに登れるようになっていた。木の上に登り"道具"を握りしめて息を殺す。ケイが持っている道具は2つの石を縄で縛ったものであった。その道具と同じものを3つ自分が足場にしている太い枝に引っ掛けた。しばらくじっとしていると一斉に森の鳥が飛び立った!。


「っ!」


ケイはその瞬間道具を鳥の群れに向かって投げ出した。がその道具は空を切る。慌てて2つ目を投げる。放物線状に飛んでいったそれは空を飛んでいた鳥に空回り、空を羽ばたくことを許さない。


ーーー「ギャァーギャアッ!」


鳥が鳴き声を叫びなから落ちてゆく。それを一瞥しすぐに道具に手をかけ鳥を狙うのであった。


ーーー結果的に言えば大成功と言える結果だった。あのあと二本とも鳥に命中し、計三羽の鳥を落とすことができた。その後落とした鳥を探し歩いていた。

「っお!あったあった!」

獲物を三羽も捕らえたことによりテンションが上り、自然と独り言がこぼれ落ちる。


それらを回収し、少し開けた場所に来た。中央には石で組んだ簡素なかまどや様々な物が置いてある。すぐ近くに沢があり便利でよくここを利用しているのだ。すぐ近くには父親と一緒に作った荷物置き場がある。雨よけ程度の簡素なもので中には寸胴鍋と乾いた薪が置いてあった。


狩った鳥を見る。落ちた衝撃で死んでしまったのかもう動かないそれは胴体が30センチほどの大きさで白い羽毛が大変美しい。頭や羽先が黒くなっておりくちばしが紅色で10センチほどで非常に長い。その長いくちばしで川魚や虫を捕らえるそうだ。くちばしは加工して装飾品として利用されている。その特徴的な外見から紅鳥と呼ばれていた。


腰に下げていたナイフで紅鳥の首を落とす。すると切り口から血が出てくるので急いで他の2つも手際よく落としていき足をロープで縛り逆さに吊るして血抜きをする。その下には寸胴鍋を受け皿にしていた。血抜きをしたいる間に薪を取り出しかまどに薪をくべる。バックパックから藁を取り出す。その藁に火打ち石で種火を作ろうとしたときに思い出す。


幼い頃父にとここに来ると毎回火起こしをしたいと駄々をこねたものだ。父がしたほうが圧倒的にはやいのだがそれでも毎回自分のワガママに付き合ってくれた。火をおこしたらゴツゴツとした大きな手で頭をガシガシとなでてくれた。力強くどこかくすぐったいようなそんな父の手が好きだった。


そんなことを思い出していると藁に火がついていた。慌てて小枝をかぶせて息を吹きかける。少し失敗しそうにもなったがなんとか小さな火が燃え始める。薪置場から薪を持ってこようとする。薪はよく乾いていてちょうどいい塩梅だった。


「おじさん相変わらずいい仕事するよなぁ~」


薪を運びながら独り言を発する。この薪は木こりのおじさんが用意してくれたものを時折まとめてこちらにケイが運び込んだものだった。この場所に置いてあったほうが何かと都合がいいのであった。


小さな火におじさんの薪をくべるとしばらくして火が薪に移った。ここまでくれば火を安定させるのは簡単だった。その後少し離れた場所に置いてあったスコップを持ち穴をほった。近くに沢があるからか、ここらへんの土壌がいいのかはケイにはわからないが、土が柔らかく簡単に穴を掘ることができた。その穴に血抜きで出た血を捨てる。その後紅鳥の羽をむしりその羽根を袋の中に溜めながら丸裸にする。ブチブチと羽をちぎる音が聞こえる。幼い頃この音が苦手で泣いてしまったこともあったが、今はそんなことはない。それどころか今では、生き物が食べ物に変わっていくこの工程がケイは好きだった。


その後、起こしておいた火で紅鳥の表面を炙ろうとする。むしり残した羽をキレイにするためである。


「っやっべ」


ケイはうっかり忘れていたものを慌てて手にはめる。元々はきれいな白色だったのだが炭などで汚れてしまい灰色になってしまった手袋であった。この手袋には雪うさぎの毛が使われていた。長毛のうさぎで体長は30センチから50センチの大きさで自分の体温を調節することに長けており夏でも毛を生え変わらせる必要がないらしい。またその毛は火に燃えづらいという不思議な毛を持っている。


雪うさぎの毛で作られた手袋をはめ改めて火で炙るするとさっきまで紅鳥だったものはお肉になった。残り2つも炙り終え、後片付けを素早く済ませた。今日は一人だけで狩りに行き、しかも狩りの結果は大成功だった。自然と口角が上がり笑みがこぼれる。早く村の皆に自慢がしたくなりいつもより足早に村へと足を運ぶケイだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。感想等いただけると今後の作品作りに励みになり私が涙をながして喜びます

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