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リアルチートと、極振りな友人達 〜運営を困らなせる噂のアイツら〜  作者: 暁 龍弥


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感覚の慣らし③ ― 極振りの再会、チュートリアル崩壊

草原の奥へ進むうちに、風の音が変わった。

空気の密度が増し、草木の揺れのリズムが不自然に乱れている。


(……騒ぎだな)


プレイヤーが密集していると、演算ノイズが広がって“音”でわかる。

不安、期待、苛立ち、混乱――複数の感情が入り混じり、草原の旋律が濁っていた。


やがて視界が開け、広場に出た瞬間。


「おい運営ふざけんなあああああ!!!!!

 なんで初期武器が壊れてんだよぉぉぉぉ!!」


見覚えのある絶叫が響き渡った。


――黒峰カイ。


両手に巨大な両手剣。

全ステータスをSTR(筋力)とVIT(耐久)に極振りしたバーサーカー。

HPゲージはほぼ満タンのまま、攻撃力の桁が初心者離れしている。


カイは初期ボス相手に暴れていた。


【チュートリアルボス:グラナバット Lv5】


推奨人数3~5人。

攻防のバランスが良く、初心者にはちょうどいい強さ。


だが――


「ぐっはぁぁ!? まだ死なねぇ!? 

 いや死なねぇっていうかオレの攻撃力が高すぎて耐性ついた感じ!? 

 なんで耐性つくんだよ!? 数値ぶっ飛びすぎて耐えられないってどういうゲームだよ!!」


お前が極振りしすぎてるだけだ、とは言わない。

だが運営の調整も苦労していそうだ。


その横――木陰に、ひっそり佇む狙撃手。


黒ローブに銀髪、無表情の青年。


――鏡夜かがみやレン。


DEX極振りスナイパー。

射撃精度100%、クリティカル率99%、防御力紙。


レンは強ボスに向けて弓を引き絞りながら、小さく呟いていた。


「クリティカル率100%到達。

 でも、発動率上限の仕様で99%に制限。

 ……運営、そういう仕様にしてきたか。やるな」


静かな声とは裏腹に、攻撃は凶悪だ。


矢が空気すら割って音速で放たれ――

ボスの弱点に綺麗すぎる角度で突き刺さる。


【Critical ×99連続命中】

【ボスの行動演算が乱れています】


「……手応えはある。だが倒れない。

 つまり、俺のビルドは“ラスボス偏重”。初心者帯に向いていないだけだ」


自己分析早すぎる。


そしてその後ろでは、呑気に宝箱を漁る少女が一人。


――三神みかみレイナ。


LUK全振りの“宝ドロ運ガール”。

初期装備がレア・レア・レア・超レアという意味不明な引きをしている。


ガラガラと宝箱を開けながら、朗らかな声が響いた。


「またレア出た〜! やば〜!

 あっ、今のボス戦、参加してないのにドロップ権入ってる〜♪

 なんでだろ〜♪ ラッキー♪」


運営、泣いていい。


そして三人の中心、すでに戦場が成立している中へ――

俺は歩み出た。


足を踏み出した瞬間、三人の視線が一斉にこちらへ向いた。


「おっ……来たなリアチー!!!!」


カイの大声。

広場の空気が一気に明るくなる。


次に、レンが短く告げる。


「シンエン。

 お前のビルドは、想像以上に解析・支援向けだ。

 火力職の支援に最適。

 ――来てくれて正解だ」


そしてレイナが満面の笑顔で手を振りながら。


「ハクアくん〜! いや今はシンエンくんか!

 一緒に遊べるって嬉しいんだよ〜!」


……懐かしい空気だ。

現実では、俺は“孤高”と距離を置かれる。

だがこの三人だけは最初から“普通に”接してきた。


名前呼びも態度も、昔のままだ。


胸の奥が熱くなる。

だが、それを顔に出さず、淡々と呟く。


「支援に入る」


カイが即座に吠えた。


「よっしゃ来た!!

 推奨人数5人? 知らねぇ。

 俺ら4人でぶん殴るぞ!!!!」


◇◇◇


【戦闘フェーズ再開】


ボスが咆哮し、広場の空気が震えた。

反応速度の音――波形の立ち上がりが鋭い。

攻撃が来る。


(まずは演算観測)


目の前に、演算の譜面が展開される。

弱点係数が上下に揺れ続けている。


(誰かの攻撃で係数がブレている補正……)


原因は――レンの極クリティカル。

弱点演算が乱れ、敵AIが混乱している。


なら、そこに旋律を叩き込む。


「深奏」


青黒い波紋が広がり、譜面の乱れを補足する。


「下降」


乱れた弱点係数を一段押し下げ、

レンの攻撃が引き起こす“ランダム性”を“確定性”に変える。


次の矢――

全弾、弱点直撃。


【Weak Critical ×12】【弱点制御成功】


レンが息を飲む。


「……今の、俺のクリティカルを“狙わせた”のか」


「演算の潮目を押しただけだ」


それだけ答えると、次の波が来た。


ボスの魔力溜め。

一撃でパーティ全壊レベルの大爆発攻撃。


周囲のプレイヤーたちが悲鳴を上げて逃げ惑う。


「来るぞぉぉおおおおお!!!!!」

カイが両手剣を構え直し、叫ぶ。


だが攻撃は間に合わない。


(耐えるのはカイだけ。だが、他の二人は落ちる)


なら――

“演算の旋律”を一つ入れ替える。


「切り替える。

 ――上昇だ」


胸の奥が鳴り、青い波紋が仲間たちに流れる。


【敏捷係数+12】【精神係数+9】【運係数+8】


レイナの胸元のアクセサリが光る。

運補正によって“緊急回避効果”が強制抽選。


「……え? 身体が勝手に……?」


レイナの身体がふっと横滑りし、轟音の爆風を回避。

レンは摩擦を感じさせない最小限のステップで避け――

カイだけが真正面から受け止める。


【被ダメージ 2桁】←VIT極振りのせいでほぼノーダメ


「ははははは!!!!!!

 効かねぇ!!!!!」


カイの雄叫び。


観戦していたプレイヤー達が一斉に騒ぎだす。


「何だ今の!? あの支援の奴何した!?」

「支援で回避発動させた? 意味わかんねえ!!」

「スナイパーのクリティカルも全部弱点に刺してたよな?」

「もしかして……あいつら、やばくない?」


ボスはよろめきながら再度構えを取る。

内部演算は完全に乱れている。


(潮目はこっちに傾いた)


旋律は最終段階に入る。

俺は譜面に触れて、一段階押し下げた。


「――落ちろ」


【弱点係数 崩壊】

【装甲演算 崩壊】

【行動ルーティン 崩壊】


ボスの足が震え、膝をつく。


カイの両手剣に血のような光が灯り――

レンの矢が無音で放たれ――

レイナの“謎のドロップ補正”が背中を押し――


「ぶっ飛べえええええええ!!!」


轟音で大地が揺れ、ボスの巨体が崩れ落ちた。


【チュートリアルボス討伐】

【記録:最短クリア(4人)】

【記録:平均レベル差 -3でクリア(未想定テーブル)】

【記録:支援職がヘイト0で最大影響度エラー


【エラー報告が運営に送信されました】


……最後の一文が地味に重い。


広場が静まり返り――

次の瞬間、プレイヤー達の歓声が爆発した。


「ヤベェ!」「何だあの4人!」「化け物の集団だろ!!」


その中心に、俺たち4人が立っている。


カイが全力で笑いながら背中を叩いてきた。


「いやああああああ!!!!!

 お前マジ最強!!!!!!!!

 俺のために生まれてきた支援職じゃねぇか!!!!」


レイナも目を輝かせながら叫ぶ。


「これからずっと一緒に遊べる〜!?

 今日から毎日ログインねハクアくん!!」


レンは淡々と一言。


「……悪くない。

 この4人、間違いなくトップ帯に行く」


俺は静かに答えた。


「……ああ。楽しみにしている」


現実では“孤高”で、

距離を置かれて、

崇拝されて、

触れられることのない存在でも。


この世界では違う。


――仲間と並んで立つことができる。


広場の空を仰ぎながら、俺は小さく呟いた。


「……ゲームってのは、いいな」


そして小さく笑った俺の顔を、

三人がどこか誇らしげに見つめていた。


――第7話 感覚の慣らし③ 了。



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