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リアルチートと、極振りな友人達 〜運営を困らなせる噂のアイツら〜  作者: 暁 龍弥


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虚無の核心 ― “意味を嫌う者”の正体

三都市同時消失を防いだ夜。


世界は救われた――はずだった。

だが、俺の胸に残った違和感は消えない。


(虚無は……“逃げた”だけだ)


勝った感触がない。

撤退した理由が、はっきりしすぎている。


レンも同じ結論に辿り着いていた。


「虚無の調者は、学習している。

 存在肯定の連鎖が広がる前に、

 もっと根本的なものを消しに来る」


カイが眉をひそめる。


「根本?」


アリアが静かに答えた。


「……“意味を生む場所”です」


その言葉と同時に、

遠くの空で“何かが欠けた”。



◆ 消えたのは「人」ではなかった


警報が鳴る。


【異常事態】

《概念消失確認》

《対象:誕生祭/学問の継承儀式/祈りの習慣》


消えたのは、都市でも人でもない。


文化・儀式・習慣。


レイナが息を呑む。


「お祭りが……

 “やってた記憶”ごと……?」


レンが歯を食いしばる。


「人がいくら生きていても、

 “意味を生む仕組み”が消えれば……

 繋がりは、いずれ自然消滅する」


虚無は理解したのだ。


“人を消すより、

人が意味を持つ理由を消せばいい”と。


カイが叫ぶ。


「卑怯だろ……!!」


俺は拳を握る。


「……虚無は卑怯じゃない。

 合理的なんだ」


そしてそれが、何より恐ろしい。



◆ カーミラの知る“虚無”


その時、空間が歪み、

黒いドレスの少女が現れた。


カーミラ・ハートレス。


「……あーあ。

 やっぱり、そこまで来たか」


レイナが身構える。


「カーミラ……!」


だが彼女は戦う気配を見せなかった。


「安心して。

 今日は“壊しに”来てない」


カーミラは虚無が消した儀式の跡を見つめ、

吐き捨てるように言った。


「虚無の調者……

 あれはね、元は“人”だった」


全員が息を呑む。


「……は?」


カーミラは続ける。


「昔々、災禍序列が生まれる前。

 世界を救おうとした“理想主義者”がいた」


彼女は苦笑する。


「救いを信じて、

 誰よりも“意味”を大事にした人間」


アリアが小さく震えた。


「……それって……」


「そう。

 虚無は、“救いが届かなかった未来”」



◆ 虚無の調者の過去


カーミラの語りは、静かだった。


「彼は、世界を救うために戦った。

 でも――間に合わなかった」


・救えなかった都市

・間に合わなかった子供

・選べなかった命


「“意味がある”と信じたものほど、

 失った時の反動は大きい」


カーミラは目を伏せる。


「彼は、最後に気づいたのよ。

 “意味を信じるから苦しい”って」


レンが低く言う。


「……意味を否定すれば、

 失う痛みも、後悔もなくなる……」


「そう」


カーミラは淡く笑った。


「救えなかった自分を、

 世界を、

 全部“最初から無かったこと”にしたかった」


レイナが涙を浮かべる。


「そんなの……

 悲しすぎる……」



◆ 虚無が最も嫌うもの


俺は、ひとつ確信する。


「……だから虚無は、

 “途中で救われた存在”を嫌う」


全員が俺を見る。


「アリアも、

 俺たちも、

 救われた都市の人々も」


「救えなかった過去」を持つ虚無にとって、

“今からでも救える”という事実は――

最大の否定だ。


アリアが震える声で言う。


「……だから……

 私を最優先で消そうとした……」


「そうだ」


俺は続ける。


「虚無は、

 “意味があったと証明される未来”を恐れている」


カーミラが肩をすくめる。


「つまり、あいつにとって一番の敵は――

 “まだ間に合う”って言葉よ」



◆ 次の標的


レンがスクリーンを操作する。


「次に消される可能性が高いのは……

 “物語”“歴史”“記録”」


レイナが息を呑む。


「……覚えてる理由、そのもの……」


カイが歯を食いしばる。


「それ消されたら……

 俺たちが救った意味すら……!」


虚無は、人を消さない。

“救われた事実”を消しに来る。


アリアが一歩前に出た。


「……なら……

 私が行きます」


全員が振り向く。


「私が“世界に意味がある証拠”になる。

 消せない“生きた記録”に」


レイナがすぐ手を取る。


「一人じゃ行かせない!!」


カイが叫ぶ。


「当たり前だ!!」


レンが静かに言う。


「“記録”は一人じゃ成立しない。

 語り手と、聞き手が必要だ」


俺は頷き、宣言する。


「虚無が“意味を嫌う者”なら、

 俺たちは――

 意味を語り続ける存在になる」


カーミラは背を向けながら言った。


「……面白くなってきたじゃない」


「虚無に、

 “それでも生きてた意味があった”って

 突きつけてやりなさい」


彼女は闇に溶けた。



◆ 物語は、消させない


アリアは俺を見上げる。


「……私、怖いです。

 でも……

 消されるくらいなら……

 “意味を持って生きた”って証明したい」


俺は迷わず答えた。


「それでいい。

 お前が生きた理由は、

 もう世界中に繋がってる」


遠くで、世界が軋む音がした。


虚無は、次の段階へ進む。



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