選択者評価会議 ― 都市と世界が、四人の“救い”を試す日
都市崩壊を阻止した翌日。
アルケイン・シェルタ中央議事堂――
大陸最大規模の会議室へ、四人は案内された。
天井は高く、光の文様が浮かび、
階段状の席には都市中の研究者・政治家・学徒・宗教者が座る。
まるで裁判のような光景。
その中心に、俺たちは立っていた。
アリアはここに同行しているが、フードで顔を隠している。
彼女の正体は、今日明かさなければならない。
静寂が走り、司会役の研究官が声を放つ。
「これより《選択者評価会議》を始める。」
響く音。
緊張が背筋を刺す。
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◆【第一項目:行動の評価】
最初に立ったのは、昨日も現れた研究官・ケイル。
「あなた方は確かに都市崩壊を阻止し、
滅び派幹部ディルを退けた。」
その言葉に、会場がざわつく。
ケイルは続けた。
「だが、それは“結果”であり――
行動そのものが正しかったかどうかは別問題だ。」
(まだ信用されていない……当然だ)
ケイルは質問する。
「深淵シンエン。
あなたはなぜ“殺さずに勝つ”という選択を強制する?」
俺は短く答えた。
「殺したら、救いたいと思う自分を裏切る。
生かせるなら、生かしたい。
――ただ、それだけだ。」
ケイルは静かに目を閉じ、言う。
「理想論だ。しかし……成立させてしまった。」
レイナが手を上げて言う。
「理想を笑うのは簡単です。
でも、理想を信じて動かなきゃ未来なんて変わらないです!」
会場がわずかに揺れた。
カイが前に出て拳を握りしめる。
「俺らはケンカがしたいんじゃねぇ。
守りてぇもの守るために戦う。それだけだ。」
レンは冷静に補足する。
「非殺傷戦闘が最適ではない場面も当然ある。
だが救える者を救う選択肢は存在する。
そして我々は“それを選ぶ力がある”と証明した。」
少しずつ、会場が揺らぎ始める。
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◆【第二項目:滅びの反応とアリアの暴走】
会議は次へ進む。
エヴァ=セラフィアが立ち上がり、柔和な声で言う。
「昨日、アリア=ヴェルダの“核反応”が不安定化した。
滅び反応は最大80%まで上昇。
大陸は崩壊寸前でした。」
会場に緊張が走る。
エヴァが問う。
「深淵シンエン。
あなたはどうやってアリアを“収めた”のですか?」
(どうやって……)
俺は正直に答える。
「支えただけだ。
アリアが救われたいと願う気持ちを――否定しなかった。」
会場がざわめく。
「感情に寄り添っただけ……?」
「そんな曖昧なことで滅び反応が下がるのか?」
「運ではないのか?」
アリアが震える手でフードに触れた。
「……違います。
救われたのは“私の心”です。」
エヴァが静かに言う。
「アリア。あなたは……自ら語れますか?」
アリアは頷き、ゆっくりフードを外した。
白銀の髪が揺れ、額の古代文字が露わになる。
会場が息を飲んだ。
【識別】
《大陸エーテルの核/救世と滅びの選択者補助機構》
《完全秘匿対象》
ざわざわ…ざわざわ…
「本物……?」
「都市を揺らす“世界の鍵”……!」
「知らなかった……」
アリアは涙をこらえるように言った。
「私は……大陸が造った“鍵”です。
救われたくてはいけない存在じゃない……
そう、ずっと言われてきました。」
レイナがそっと手を握る。
アリアの声は震えていた。
「でも……救われたいって思ってしまった。
生きたいって思ってしまった。
その矛盾が……滅びを呼んだのです。」
ケイルの眉が僅かに揺れる。
アリアは強く言う。
「深淵たちは……私を責めなかった。
“弱くていい”って言ってくれた……
私は……初めて救われたんです……!」
その言葉に、会場の空気が大きく揺れた。
中には涙ぐむ者もいる。
(届き始めている……)
だが、簡単には終わらなかった。
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◆【第三項目:滅び派の主張】
議場の後方――
黒衣の男たちが立ち上がった。
「滅び派代表、“イスト=バーロウ”が申し上げる。」
彼の声は静かで、だが異様なほど強い。
「深淵シンエンたちの行いは“救い”ではない。
ただ、滅びの時期を引き延ばした“延命処置”にすぎない。」
会場がざわつく。
イストは続けた。
「大陸は千年前から滅び続けてきた。
今さら救済などあり得ない。
希望を与えることこそ――最大の罪だ。」
レイナが震える声で反論する。
「希望を与えるのが……罪?」
イストは頷く。
「叶わぬ希望ほど、人の心を殺すものはない。」
(違う)
俺は一歩前へ出て言う。
「叶わないかどうかなんて、誰が決めるんだ?」
イストは視線を向ける。
「運命だ。
滅びは“完成した未来”。
そこから逃れることはできない。」
俺は静かに告げた。
「運命は“見えた未来”であって――“確定した未来”じゃない。
それを変えていくのが人間だろ。」
会場がざわ…
イストは冷笑する。
「君は調律者。“特別な存在”だからそう言える。
凡人が世界を変えられるはずが無い。」
レイナ・カイ・レンが同時に叫んだ。
レイナ「そんなの違う!!」
カイ「凡人でも世界変えられるだろ!!」
レン「可能性は誰にでもある」
アリアも続けた。
「私……“鍵”という存在すら、人間に救われました。
可能性は……あります!」
イストの顔が険しく歪む。
「……なら証明してみせろ。
その希望が本物であると。」
会場中の視線が俺たちに向けられる。
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◆【第四項目:救済の証明】
ケイルが静かに告げる。
「深淵シンエン。
あなたが選択者としてここにいる価値を――
あなた自身の言葉で証明してください。」
(証明……)
俺は仲間を見て、一歩前へ出た。
静寂の中、声を放つ。
「俺たちが救いを信じる理由は、三つある。」
会場が息を呑む。
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①「救えるから救う」ではなく
「救いたいから救う」
「結果が保証されていなくても、
救いたいと思う気持ちは本物だ。
可能性がゼロでもいい。
ゼロから一を作るのが“意思”だ。」
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② 誰かを救うには、まず
“その人の弱さを受け止めること”
「アリアは弱かった。
でも、その弱さを責める必要なんてどこにもない。
救われたいと願う心を否定しないこと――
それこそが救いの始まりだ。」
アリアが涙を落とす。
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③ 運命は“確定した未来”ではなく
“揺らぐ未来”だ
「滅びが見えていたとしても、
調律すれば軌道は変わる。
未来は、変わるべきだと思う奴らが変えていくんだ。」
ケイルが目を見開いた。
エヴァが涙を浮かべた。
イストの表情が苦く揺れた。
そして――
会場の空気が一気に変わった。
『……救いは偽善ではないのか?』
『いや、あれは本気だ……』
『あの言葉に嘘はない……』
『救われたい……そう思ったことすら否定しないなんて……』
救いが、広がっていた。
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◆【判定】
司会者が声を放つ。
「評価委員会――判定を行います。」
緊張が走る。
アリアが手を握りしめる。
「どうか……認めて……」
数十秒の沈黙ののち――
「――判定」
会場全体が立ち上がる。
「深淵シンエンたち四名を――
“正式な救世選択者”として承認する!!」
歓声が響いた。
涙ぐむ者、祈る者、胸に手を置く者。
レイナが泣きながら笑う。
「よかった……よかったぁ……!」
カイが豪快に笑う。
「これで堂々と戦えるな!!」
レンは静かに頷く。
「評価が重荷になるが……悪くない。」
アリアは涙をこぼしながら言った。
「……ありがとう……
本当に……救われたのは、私です……」
俺は軽く微笑んで答える。
「じゃあ――これからもっと救おう。」
その瞬間、ログが降りた。
【世界更新】
《救世選択者の承認》
《大陸全体の滅び反応 大幅低下》
《災禍序列の動きが激化します》
(来るな……)
次の戦いの気配が迫る。




