都市崩壊阻止戦 ― 滅び派、覚醒。アリア暴走の危機
アルケイン・シェルタ全域に警報が響きわたった。
【緊急警戒】
《滅び派による都市襲撃発生》
《エーテル核反応が不安定化》
《大陸滅び確率:+12% 上昇中》
空気が震え、塔の頂上にひびが入りはじめる。
アリアが胸を押さえ、苦しげに震えた。
「……ごめんなさい……私の心が揺れるほど……
世界が“滅び側”に流れていく……!」
その声が、都市を覆う風さえ震わせた。
レイナがすぐに抱きしめる。
「大丈夫!私たちがいるから!!」
だがアリアの震えは止まらない。
「怖い……助けてほしい……でも……救われちゃいけない……
そんな矛盾を抱えるたびに……“滅び”が活性化するんです……!」
レンが冷静に解析する。
「つまり、アリアの感情は世界のパラメータそのもの。
暴走させたら――都市全域が消える」
カイが叫ぶ。
「やべえじゃねぇか!守んなきゃ――!」
しかし、その言葉を遮るように――
空から“黒い繭”が降りてきた。
繭が割れ、黒衣の男がゆっくり姿を現す。
銀髪、青白い肌、死を思わせる冷たい目。
【識別:滅び派 幹部】
《ディル=アグレス》
《破滅思想の伝導者/アリア覚醒の鍵を握る者》
ディルは一歩前に出て、アリアを見つめた。
「滅びの核が揺れている。実に美しい。
アリア=ヴェルダ……君が壊れれば、大陸は滅ぶ」
アリアの顔が青ざめる。
「……やめて……来ないで……」
ディルは微笑む。
だがそれは慈悲ではなく、“終わりに向かう優しさ”。
「君は壊れるために生まれた。
救われたいなど、間違った願いだよ」
アリアの胸が痛みに引きつる。
レイナが叫ぶ。
「そんなこと言わないで!!」
カイが剣を構える。
「アリアを狙うなら容赦しねぇ!!」
レンも弓を構える。
「目的はアリアの精神破壊……
“言葉で殺す”タイプの敵だ」
俺はアリアの肩に手を置きながら言う。
「大丈夫だ。聞かなくていい」
だが、ディルの声は“精神に直接響く”。
「アリア。
君は世界のために死ぬべき存在だ。
そう望む者が、どれだけいるか知っているか?」
アリアの身体が震え、呼吸が乱れる。
「やめて……そんな言葉……聞きたくない……」
ディルは静かに微笑む。
「では、教えてあげよう。
“君の存在が生んだ苦しみ”を」
次の瞬間――
都市全域の“心の声”がアリアへ流れ込んだ。
『滅びが早まったのはアリアのせいだろ』
『鍵のくせに感情なんか持つなよ』
『存在するだけで世界を揺らす危険物』
『消えてくれたほうが平和になる』
アリアは頭を抱え、地面に崩れ落ちた。
「……いや……いや……いや……
そんな……望んでない……!」
心の痛みに反応して、世界の核が脈動する。
【滅び反応上昇】
《大陸崩壊度:+25%》
レンが叫ぶ。
「まずい!!アリアの精神が崩れれば――
世界が本当に滅びる!!!」
カイがディルへ突撃しようとする。
「テメェふざけんなあああああ!!」
だがディルは一振りで衝撃波を放ち、
カイは壁に叩きつけられる。
レイナの回復魔法より早く、
アリアの悲鳴が都市に響く。
「助けて……誰か……
救われたいって思っちゃいけない……のに……!!」
俺はアリアの手を握り、叫んだ。
「アリア!!俺を見ろ!!」
涙で濡れた瞳がこちらを向く。
「……深淵……」
「いいんだ。
救われたいって思っていい。
望んでいい。
どれだけ矛盾してても――全部受け止める!」
アリアの震えは止まらない。
「でも……私が生きたいって思ったら……
世界が……世界が……“揺れちゃう”……!!」
俺は強く言った。
「揺れたら支える。
“お前が世界を滅ぼす”んじゃない。
“俺たちが世界を守る”んだよ。」
その瞬間だった。
ディルが空気を切り裂くように笑った。
「感情で世界は救えない。
救えないのに救おうとするから、破滅するんだ。」
黒い魔力が天へ伸びる。
【滅び派覚醒】
《ディル=アグレス、破滅形態へ移行》
周囲の空気が震え、瓦礫が空中へ浮きはじめる。
ディルの声が都市全域に響く。
「滅びこそ救い。
終わりこそ安らぎ。
今ここで――世界を静かに終わらせよう。」
カイが立ち上がり、剣を構える。
「ふざけんな……!」
レイナが手をかざす。
「アリアちゃんを傷つけないで……!」
レンが矢をつがえる。
「殺さずに撃退する……
だが本気じゃなきゃ勝てない相手だ」
ディルの破滅波動が迫る。
アリアが胸を押さえて叫ぶ。
「怖い……壊れたくない……!!
でも壊したくない……でも……!!」
感情の暴走が世界を揺らし――
【滅び反応 80%】
都市が崩壊寸前まで傾く。
――このままでは大陸全土が終わる。
だから、俺は叫んだ。
「アリア!
お前一人で耐える必要なんかない!!!
“世界の重さ”は、お前ひとりのものじゃない!!!」
アリアの涙が宙に散った。
「……っ……助けて……深淵……
私……もう……強くない……!!」
俺はその願いを掴むように手を伸ばす。
「いいんだ。弱くていい。
弱さごと、全部支える。」
カイ・レイナ・レンも声を重ねた。
カイ「誰かを救うには、弱さを受け入れられなきゃな!!」
レイナ「一緒に泣いて、一緒に強くなるんだよ!!」
レン「矛盾も恐怖も、俺たちが補正してやる!」
四人の声がアリアの心へ届いた瞬間――
アリアの核反応が方向を変えた。
【滅び反応減少】
《80% → 45% → 20% → 8%》
アリアの瞳が、揺れながらもまっすぐ俺を見つめる。
「……ありがとう……
“救われたい”って、初めて言えた……」
その光景を見て、
ディルの顔が初めて“怒り”に染まった。
「救われたいなど――認めるなぁぁああ!!!」
彼は破滅の槍を形作り、四人へ向けて放った。
だが俺は宣言する。
「四人で守る!!」
全員の動きが重なった。
カイ「前衛守護!」
レイナ「光盾展開!」
レン「衝撃の軌道補正!」
深淵「《四重調律》!!」
四人の調律が重なり、
破滅の槍は光の中で砕け散った。
ディルが叫ぶ。
「あり得ない……!
感情で――滅びを押し返すだと!!?」
俺は前に出て宣言する。
「救われたいという祈りは、
滅びたいという諦めより強い。」
ディルの瞳が揺れる。
「……救済の調律……
本当に存在するのか……?」
アリアが涙を拭きながら言う。
「私はもう……滅びのために生きない……
“生きたい”って思っていいって……深淵たちが教えてくれたから!」
次の瞬間、ディルの身体がひび割れた。
「馬鹿な……!
滅びを否定するな……!
否定されたら……俺たちは……何を信じれば……!」
破滅の光が逆流し、ディルの形が崩れはじめる。
俺は最後にひとつ言った。
「信じるものは、お前が決めればいい。
滅びに縛られる必要なんかない。」
ディルは苦しそうに震え――
光に砕けて消えた。
【滅び派 幹部ディル 撃退】
《都市崩壊阻止:成功》
《滅び反応:3%》
《大陸滅亡確率:大幅に減少》
都市は静かに色を取り戻し、
アリアはゆっくりと深呼吸した。
「……助けてくれて……本当にありがとうございました……
私……生きていいんですね……?」
俺は頷く。
「当たり前だ。
アリアは、アリアとして生きていい。」
カイ「もう逃がさねぇからな!」
レイナ「一緒にいようね!」
レン「世界の鍵だろうが、人間だろうが関係ない」
アリアは涙をこぼしながら微笑んだ。
「……私も……みんなを守りたい……!」
都市の人々が遠巻きに見ていた。
疑いの視線が、少しだけ変わっていた。




