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リアルチートと、極振りな友人達 〜運営を困らなせる噂のアイツら〜  作者: 暁 龍弥


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33/42

― アルケイン・シェルタと“英雄が嫌われる世界”

決戦から三日後。


大陸中央に位置する歴代最大の都市国家――

神歴図書都市アルケイン・シェルタ”。


世界のあらゆる知識と記録が集まる都市。

魔法塔、大学院、研究区画、学園都市、図書遺跡――

文明・知識・理論の中心。


だが、都市に足を踏み入れた瞬間――

肌を刺すような視線が降り注いだ。


カイが眉をしかめる。


「……嫌な空気だな」


レイナは怯えるように周囲を見る。


「みんな……私たちを睨んでる……?」


レンは雑踏の空気を素早く分析する。


「敵視ではない。だが“警戒と嫌悪”が支配的だ」


隠しているつもりなのに、聞こえてくる。


「……あいつらが“選択者”か……」

「災禍序列を刺激して滅びの時期を早めた連中だろ」

「救った? 本当に? ただ未来を乱しただけじゃないのか」


レイナの顔色が曇る。


「救ったのに……悪者扱いされてる……?」


カイは歯ぎしりしながら拳を握る。


「ふざけんな……!命がけで戦ったのにこの仕打ちかよ!」


レンが冷静に抑える。


「ここは“理論の都市”。

 結果より“根拠”で判断する。

 『カーミラを救った』という結果は見えるが、

 『災禍を根本的に止められる証明』がまだない以上、

 希望より不安を優先するのは当然だ」


「正義の味方は、証明されるまで正義じゃない」


重い言葉だった。



しばらく歩くと、巨大な図書神殿が見えた。

その入口で――二人の人物が待っていた。


ひとりは白衣の青年。

無表情で鋭い目を持つ、計測器のような人物。


【識別】

《学術院・首席研究官:ケイル=リヴィオン》


もう一人は銀のローブの女性。

冷たくも気品のある微笑みを浮かべている。


【識別】

《救世派 聖歌導師:エヴァ=セラフィア》


二人は同時に言った。


「“選択者”の皆さん。お待ちしていました。」


だけど、歓迎の言葉ではなかった。


ケイルが淡々と告げる。


「カーミラ救済の件、確認済みです。

 しかし――結果として世界の滅亡予測は25%悪化しました」


レイナが青ざめた。


「悪化って……どういうこと?」


ケイルはためらいもなく続ける。


「“滅び派”の勢力が大幅に増加したためです。

 “滅びを望む者も生きられる”という可能性が示された結果、

 大陸全体の“滅び選択率”が急上昇しました」


(救った行為が、滅びたい者の正当性をも生んだ)


皮肉で残酷な現実。


エヴァが優雅な声で告げる。


「救うために戦ったこと、その意思は尊敬します。

 しかし――その“結果”は評価できません。」


都市の人々の冷たい視線が一斉に集まる。


・英雄

・救世主

・調律者


――それらは称号じゃない。


“結果を証明できない限り、恐怖の象徴”。


アリアが小さく呟く。


「……この都市はいつもこう。

 “救おうとした人”ほど嫌われる」


その言葉に、ケイルの視線が鋭く動いた。


「アリア=ヴェルダ。

 あなたは表では“案内役”ですが……本当は何者です?」


レイナが息を呑む。


「本当……?」


アリアは言葉を詰まらせ、唇を噛んだ。


レンがすぐ間に入り、遮るように言う。


「個人情報の詮索はやめろ。

 必要な時に本人が話す。」


アリアが一瞬だけ安堵した表情を見せる。


ケイルは肩をすくめる。


「では、時間までに話していただきたい。

 “あなたの正体”は、この世界の未来に関わる」



案内されたのは、都市中央の会議室――

だがそれは“裁判室”に近かった。


ケイルが宣告する。


「三日後、《選択者評価会議》を開きます。

 あなた方が『本当に救済に値する存在か』を判定します」


レイナが震える。


「救うために戦っても、疑われるの……?」


エヴァは静かに言う。


「信じるためには根拠が必要です。

 “善”は証明されなければ善になりません。」


カイは椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり叫ぶ。


「ふざけんな!!

 命張って救ったんだぞ!?信じろよッ!!」


エヴァは微動だにせず返す。


「それを“証明”できるなら、すぐに信じます。」


レンが小さく溜息をつく。


「ここは他の地域とは思想が違う……

 “結果が良ければ認める”ではなく

 “証明できなければ評価しない”……」


アリアは震えながら言う。


「ここは世界の“頭脳”。

 ここに認められないと――大陸全体が敵になります」


沈黙が落ちた。


ケイルが最後に冷たく告げる。


「三日後の会議で証明してください。

 “あなた方が救世であり、災禍ではない”と。」


そして彼らは去っていく。



会議室に残された四人。


カイが壁を殴りつける。


「救ったのに……救いが評価されねぇのかよ……!」


レイナは涙をこらえて呟く。


「誰も傷つけたくないって思ったのに……

 どうしてこんなに苦しいんだろう……」


レンは手を握りしめて言う。


「ここからが本当の救済だ。

 救われたいと願う者だけ救っても世界は変わらない。

 “救いを信じられない者”すら救えるなら初めて意味がある」


アリアは震える声で言った。


「……あなたたちは、世界を救える」


俺は静かに頷く。


「救う。

 理解されなくても。

 嫌われても。

 それでも救う。」


カイ、レイナ、レンが頷く。



だがその夜、アリアは一人で泣いていた。


小さく、震える声で独り言をこぼす。


「……本当のことを言わなきゃ……

 “私が世界の滅びの鍵だ”って……」


その声は誰にも届かなかった。


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