決戦 ― 調律者 vs 奈落ノ調者(後編)/“救う勝利”
世界が震えた。
破滅の旋律が最高潮に到達し、空すら黒く染まる。
カーミラが泣きながら叫ぶ。
「終わらせる!全部壊す!
壊れたら楽になるの!!
壊すしか私は救われないの!!!」
破滅の音が渦を巻き、街が軋む。
地面はひび割れ、構造物が音を立てて崩れ落ちる。
だが――四人は走り続ける。
殺すためではなく、救うために。
◆
最初に前へ飛び出したのは――カイ。
カイは剣を振り抜き、破滅の衝撃波を正面で叩き切った。
「この戦いは終わらせねぇ!!
お前が泣きながら破壊選んでる限り、俺は絶対止まらねぇ!!!」
カーミラが涙の笑顔で応じる。
「優しさなんて……“残酷”なんだよ!!」
ドレスの裾が舞い、黒の刃が十字に広がる。
「《奈落連奏》」
四連撃、四方向からの同時攻撃。
普通なら避けられない。
カイはそれでも笑った。
「そんなもん――仲間のためなら踏ん張れるだろ!!!」
ガッ!!!
剣と刃が激突し、カイの足元の床が崩れる。
骨が軋む。血が流れる。
それでも倒れない。
「俺は力で前を切り開く!!!
泣いてる奴を救いてぇからだ!!!!!」
その咆哮が、破滅の旋律の一角を砕いた。
◆
次に動いたのは――レイナ。
レイナは震えた足で立ち上がり、前に出る。
「カーミラちゃん!!」
破滅の風に身体が吹き飛び、血が滲む。
それでも声を張り上げる。
「“苦しい”“助けてほしい”“怖い”――
それ全部言っていいんだよ!!!」
カーミラの瞳が揺れる。
苦しみを隠すために破壊を選んだ少女。
だからこそ、レイナの言葉は刺さった。
「壊したいって思うのも、助けてって思うのも、
どっちも間違ってないよ!!!」
レイナの杖が光を放つ。
「《慈光の抱擁》!!!」
破滅の旋律へ、感情の肯定をぶつける魔法。
傷を癒すためではなく、“心を支えるため”の魔法。
カーミラの膝が震えた。
「そんな……優しさなんて……反則だよ……」
破滅の旋律がさらに崩れ、泣き声が混ざる。
◆
三番目に動いたのは――レン。
再構築できない矛盾を、たった一人で解いた戦略家。
血で濡れた弓を構え、息を切らしながら叫ぶ。
「壊したい自分と、救われたい自分!
その二つが同時に正しいなら――
矛盾ごと許してやればいいだろ!!!」
矢に魔力が収束する。
「《心象反響射》!!!」
矢はカーミラへ“傷”ではなく“心の音”を返す。
・壊したい
・救われたい
・楽になりたい
・誰かを信じたい
・信じるのが怖い
全部同時に存在している――と見せつける矢。
引き裂かれるはずの矛盾が、ひとつの痛みとして形になる。
カーミラの呼吸が乱れ、泣き声が漏れる。
「そんなの……そんなの受け入れられるわけない……!!
受け入れたら私……救われたいって認めちゃうじゃない……!」
それでも三人の想いが破滅の旋律をほぼ破壊した。
残るのは――最後の一撃。
◆
俺はゆっくり前に歩く。
武器は構えていない。
攻撃の構えもない。
ただ近づく。
カーミラはわずかな破滅の魔力で自分を守ろうと叫ぶ。
「来ないで!!
来たら……私、期待しちゃう!!!
助けてほしいって言っちゃう!!!!」
俺は迷わず言う。
「言っていい。
泣いていい。
助けてって言っていい。」
カーミラの魔力が暴発し、風景が白く霞む。
「お願いだから来ないで……!
期待して裏切られたら、また壊れちゃうから……!」
俺は答える。
「裏切らない。
――何度壊れても、何度でも助ける。」
破滅の旋律が完全に崩れる音がした。
カーミラの膝から力が抜け、ドレスの裾が揺れる。
俺は手を伸ばす。
「カーミラ」
彼女は、震えながら顔を上げた。
涙に濡れた瞳で――本当の願いを言う。
「……助けて」
その瞬間。
黒い魔力が砕け、破滅の旋律は消滅した。
俺は少女の身体を抱き止める。
熱い。震えている。涙が頬を濡らす。
「言えたじゃないか」
カーミラは声にならない声で泣き続けた。
「助けてほしかった……ずっと……
でも誰も助けてくれなかった……!」
「だから俺たちが来たんだよ」
四人が近寄り、カーミラを囲む。
攻撃ではなく、守るために。
・カイ → 怒りで敵を撃退
・レイナ → 優しさで心を支え
・レン → 理性で矛盾を救い
・俺 → 調律で願いを受け止めた
戦いは終わった。
◆
【重大イベントクリア】
《第二章 決戦:奈落ノ調者》
《勝利条件:カーミラ救済 → 達成》
《死亡者:0》
《追加報酬:特殊フラグ「救済戦勝」取得》
街に色と音が戻り、光柱が柔らかく輝く。
だが、通知はもうひとつ落ちてきた。
【世界変動】
《調律によって“滅びの未来”が正式に否定されました》
《災禍序列が“最大殺害対象”をあなたたちへ変更》
レンが低く息を吐く。
「これで“災禍”は全力で潰しにくる」
カイは笑う。
「なら潰し返すだけだろ」
レイナがカーミラの手を握りたいと震えながら言う。
「一緒に……来よう?」
カーミラは首を横に振る。
涙は止まっていたが、表情は曇っていた。
「私はまだ“味方”になれない
――けど、敵でもいたくない」
俺はうなずく。
「それでいい。
今はそれで十分だ」
世界はすぐ変わらない。
人もすぐ変わらない。
だからこそ、変わろうとする一歩を尊く思う。
カーミラは涙の跡が残る笑顔で言った。
「ありがとう……
殺さないでくれて……
救ってくれて……」
そして光の中へ転移して消えた。
きっとまた会う。
次はもう敵じゃない。
けれど完全な味方でもない。
そんな絶妙な距離のまま――物語は続く。
俺は静かに言う。
「行こう。まだ救うべきものがある」
三人が頷き、アリアが微笑む。
【第三章突入】
《世界の調律編:都市“アルケイン・シェルタ”》
《新事件:救世派と滅び派の“対立劇”開幕》
救ったからこそ、次の試練が始まる。




