大陸の核心へ ― 古代遺跡《レゾナンス・アーク》と“第一の刺客”
大陸エーテル北部。
森を抜けた先に、空へ向かってそびえ立つ巨大な“柱”があった。
石造りではない。
金属でもない。
まるで光と音で組み上げられたような建造物。
アリアが静かに言う。
「ここが、古代遺跡。
大陸の核心へつながる門です」
巨大な柱は、鼓動しているように光を脈打っている。
「1000年前 ― 私たちヴェルダは“音を遺す文明”でした」
「音で記録し、音で感情を共有し、音で世界を形づくっていたのです」
カイは腕を組んで低く鳴らす。
「音で世界を作る……シンエンと同じか」
アリアは首を横に振る。
「いいえ。
深淵シンエンは“調律”――世界を整える。
古代ヴェルダは“共鳴”――世界を重ねる。」
レンが理解したように言う。
「整える vs 重ねる。
真逆の概念ではなく、親和し得る概念だ」
アリアは静かに続けた。
「しかし、1000年前――
私たちの“共鳴文明”に、外から別の旋律が侵入しました」
レイナが息を呑む。
「それって……」
アリアは頷いた。
「そう。《災禍序列》です。
本来この大陸には存在しない――“突然の異物”。
調和の世界に、“破滅の旋律”を流し込んだ」
そこで文明は崩壊した。
そして大陸は“滅びる未来”に向かい続けてきた。
アリアは拳を握った。
「1000年の間、ヴェルダは救いを求め続け……
そしてついに、あなたたち四人が来た」
◆
遺跡の奥は暗く、空気が澄んでいる。
足音が反響し、光の粒子が舞い、
階段のひとつひとつが音を立てる。
迷宮ではない。
“音の道標”そのもの。
シンボルらしき部屋へ入ると、
半透明の巨大な石版が浮かんでいた。
アリアが触れ、動画のような記録が浮かび上がる。
そこには――
古代ヴェルダの人々と、巨大な構造物の建設風景。
音と魔力で、自然と文明を繋ぐ美しい映像。
しかし突然、映像が乱れ――
黒い影が降りてくる。
声ではなく、音だけの存在。
破滅そのもの。
次の瞬間、映像の中の人々が笑いながら互いを傷つけ始める。
そして音だけを残し、文明は消えた。
レイナが胸元を押さえ、震える。
「……怖い……
でも泣きそうなくらい、悲しい……」
レンは固い声で言う。
「破滅の旋律は、喜びを模倣する。
人の苦しみを“快楽”と誤認させる」
カイは怒りに歯を食いしばる。
「何千年もずっとこんな目にあってきたのかよ……」
俺は映像の音を聴き続ける。
(これは滅びじゃない。
“破壊の快感を植え付けられた末路”)
アリアが涙を堪えながら言う。
「……だから大陸は迷っているのです。
救われたいのか、滅びたいのか。
――自分たちの意思がわからない」
その言葉は、胸に重く刺さった。
◆
遺跡の最深部へ辿りついた瞬間だった。
カシャ――ン…
耳障りな金属音。
音の調和が乱れる。
そして、現れた。
黒い外套。
顔を覆う仮面。
背中に複数の刃を収めた異様な武器。
名前が視界に浮かぶ。
■【災禍序列 第七位】
《狂刃の調奏者/ジオ=ラグナ》
カーミラの部下――
“破滅の旋律を刃で増幅する者”。
ジオは狂気ではなく、冷酷な声で言った。
「選択者ご一行、ようこそ。
その遺跡を起動されては困る。
“終焉”が無効になるからな」
レイナが震える。
「やっぱり……邪魔しに来た……!」
カイは剣を突き出す。
「上等だ!オマエらが敵ならわかりやすい!」
レンは静かに分析する。
「動きは速い。だが癖がある。
調律者である可能性は――高い」
ジオは仮面の奥で微笑んだように見えた。
「正解。
私は《刃奏者》
“破滅の調律を戦闘に転写する者”だ」
そして――
俺に視線が刺さる。
「深淵シンエン。
君の“調和の旋律”は、非常に美しい。
だからこそ――壊し甲斐がある」
刹那。
ジオが消え、
視界にもういた。
「っ!!」
カイが即座に割って入る。
火花――音が跳ねる。
剣の軌道が、戦いの“リズム”を乱す。
ただ早いだけじゃない。
“破滅の旋律そのもの”で振るわれた刃。
レンが叫ぶ。
「シンエンへの攻撃は“音を乱すこと”が目的だ!!
調律させないための攻撃だ!!!」
ジオは狂気ではなく理性で殺意を重ねる。
「調律さえ奪えば、君はただの少年だ。
可能性は潰す時が最も美しい」
カーミラとは違う。
快楽ではなく“論理の破滅”。
二種類の災禍が揃ってきている。
(調律を封じられれば――不利)
だから俺は前に出た。
「調律は奪えない。
俺の音は、仲間がいるほど強くなる」
レイナが涙のような笑顔で叫ぶ。
「ハクアくん!!私が支えるから!!」
カイが敵の刃を受け止める。
「殴り合いなら任せろ!!!」
レンが援護射撃でリズムを整える。
「割り込みタイミングは俺が作る!」
仲間の音が、俺の中に重なっていく。
そして――
「《同奏・調律:絆交響》」
四人の意志が調律へ転写された。
・カイ → 攻勢
・レイナ → 支援
・レン → 最適化
・俺 → 調律
それぞれの“らしさ”がそのまま力になる。
戦場の音が――俺たちの側に傾いた。
ジオは初めて焦燥の色を見せた。
「……なるほど。
仲間がいる限り――君は壊れないのか」
俺ははっきりと言う。
「仲間がいるから強いんじゃない。
仲間と一緒に“戦いたい”から強いんだ」
ジオの姿が揺らぐ。
「《強制転移》……!?」
「まだ……削り切れていない……!」
災禍序列の強制召喚によって、
ジオは光の粒になって消えていく。
その最後の言葉は、静かで残酷だった。
「次の刺客は――“カーミラの番”だ」
◆
遺跡の静寂が戻る。
アリアは震える声で言う。
「戦わなくていい未来を――
本当に選べるんですか……?」
俺は頷く。
「選べる。
俺たちが諦めなければ」
カイが剣を振り上げる。
「何回来ても潰すだけだ!」
レイナは涙を拭き、笑う。
「誰も泣かせたくない。
だから戦うんだよね!」
レンは矢を持ち直す。
「敵がくるたび、俺たちは強くなる」
アリアは膝をつき、
胸に手を当てて祈るように言う。
「……すべてを救おうとする音。
どうか――消えないで」
遺跡中央の装置が光を放つ。
【大陸の核心ルート解放】
《レゾナンス・アーク起動》
《次の目的地:神歴図書都市“アルケイン・シェルタ”》
新たな冒険が開く。
だが同時に、
カーミラは動き出す。




