表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルチートと、極振りな友人達 〜運営を困らなせる噂のアイツら〜  作者: 暁 龍弥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/42

神秘大陸エーテル上陸 ― 祝福と危険。新種族“ヴェルダ”と最初の裏切り者

セフィロート号が東の水平線を越えたとき、

海の青はゆっくりと紫がかった光に変わった。


空気は濃く、魔力の匂いが纏わりつく。

波がきらめき、霧が淡く漂い、

遠くに巨大な樹の影が見える。


神秘大陸エーテル――

これが、世界でまだ誰も立っていない大地。


ログが静かに流れる。


【最初の大陸視認者:四人】

《世界優先権(探索)+1》

《サーバー全体にアナウンスは流れません》


(優先権……戦争の火種だな)


俺は気を引き締め、舵を切る。


それから数時間――

ついに上陸地点が近づく。


桟橋、森、光る石畳……

港らしきものは存在しないのに、

まるで“歓迎するために生まれた海岸”のようだった。


上陸の瞬間――


海岸の風が音を弾く。


「……聞こえる」


森のほうから、澄んだ鈴のような音。


音に呼応するように、影が現れた。


白い髪、褐色の肌、細長い耳、金と蒼の瞳。

人間に似ているが、魔力密度がまるで違う。


美しく、気高く、儚い。


彼女は胸に手を当て、微笑む。


「神秘の大陸エーテルへようこそ。

 旅の民、深淵の旋律を纏う者たち」


名前が視界に浮かぶ。


【リエル=ヴェルダ】

《種族:ヴェルダ》

《大陸エーテルの守り人》

《魔力共鳴(適性あり)》


レイナが息を呑んだ。


「……綺麗……」


レンは観察しつつ、静かに言う。


「話し方、仕草、視線の動かしかた……

 戦闘民族ではない。外交に慣れている」


カイは腕を組み、素直に笑う。


「敵じゃなさそうだな。話してみようぜ?」


俺が一歩前に出ると――


リエルはゆっくり膝をつき、

額を砂浜に触れるほど深々と頭を下げた。


「我が民は“深淵の訪れ”を、

 千年もの間待ち続けていました」


風が凍りついた。


(千年前から……?)


リエルは顔を上げず、言葉を続ける。


「大陸エーテルは長く滅びに向かってきました。

 あなたがたは“救済の調律者たち”――

 そう、伝承に記されているのです」


レイナが震えながら、俺の袖をつかむ。


「ハクアくん……予言……だよね……?」


レンは眉を寄せる。


「予言か、誘導か、計画かはまだ分からない。

 “千年前から訪れが決まっていた”なら、危険だ」


カイは笑いながらも目が鋭い。


「救世主扱いってのは嫌な予感しかしねぇ。

 救世主ってのは都合よく使われるのがオチだ」


俺はリエルに問いかけた。


「俺たちに、何を求める?」


その瞬間――リエルは涙を浮かべた。


「救ってください。

 “この大陸を蝕む災禍”から」


災禍――

その単語に、全員の呼吸が止まった。


リエルは続ける。


「《災禍序列》は、もともとこの大陸の存在。

 外の世界へ出たのは、つい最近……」


(やはり、災禍の始まりは“ここ”)


リエルは涙のまま俺の手を取った。


「どうか……助けを……」


迷う理由は無いが、

安易な肯定が“宗教化”を引き寄せる。


だから俺は静かに答えた。


「助けはする。

 ただし――依存も崇拝も受けない。

 俺たちは“遊びに来た冒険者”だ」


リエルは驚いた後、

緊張がほどけたように微笑んだ。


「……ありがとう。

 あなたがたが“自由であること”が、

 この大陸にとっての救いです」


レイナが胸を撫でおろす。


「あぁ〜よかった……話が通じる人で」


カイは笑った。


「じゃ、まずは観光だな!!」


レンは肩をすくめる。


「観光の途中で敵が来るのがこのゲームだ」


――そしてその通りだった。



リエルの案内で森を抜け、

都市《エル=シェルタ》に足を踏み入れた瞬間。


ログが開く。


【初の新大陸都市発見者:四人】

《都市初期権限:選択》

《この都市の未来を“発展/中立/戦闘”から選ぶことができます》


プレイヤー街の都市とはまるで違う。


・空に浮かぶ階層都市

・魔力で形成された街路

・透明な建造物

・生命と魔法が融合した文明


見とれる間もなく、

都市にいたヴェルダたち全員が振り返った。


「救世主だ……!」

「深淵が来た!!」

「千年の待望が叶った!」


一瞬で取り囲まれる。


だが――

その人混みの中で、俺は“違和感の音”を聴いた。


(偽物のざわめき……混ざってる)


次の瞬間。


すれ違ったヴェルダの少年が

袖の中から短剣を抜き、


――リエルの胸を刺そうとした。


「!!」


反射より速く、俺は腕を引き寄せた。


「《個別調律:減衝》」


少年の動きが無音のまま無力化し、

短剣が地面に落ちる。


広場が騒然とした。


少年は憎悪に満ちた目で叫ぶ。


「救世主なんていらない!

 大陸は滅びるべきなんだ!!!」


レイナが怯える。


「なんで……同じ種族なのに……」


レンが即座に分析する。


「ヴェルダは一枚岩ではない。

 “救われたい派”と“滅びたい派”がいる」


カイは剣に手をかけた。


「災禍序列の息がかかってんな……!」


少年は絶望に満ちた笑みで言った。


「もう遅い……

 救いの到来は、滅びの合図なんだ……

 すべての運命は――すでに始まってる……」


その瞬間、広域ログが世界に落ちた。


【世界イベント更新】

《新大陸・エーテル大陸にて“救世主襲撃事件”発生》

《大陸内世論が【救世派 vs 滅び派】に二分されます》

《四人の行動が、どちらの支持を強めるかを決定します》


都市全域が騒然としていく。


救世か滅びか。

どちらを支持するかで大陸中が割れ始めた。


リエルは膝を震わせながら言った。


「お願い……

 この大陸を――失わせたくない……!」


俺は答える。


「救う。

 ただし――“大陸自身が生きたいなら”だ」


救いの押し付けは、破滅と同じだ。

だから、選ぶのは大陸自身。


カイは笑う。


「リアチーらしい答えだな!」


レイナはにっこりする。


「それなら、どっちの人も救えそうだよ!」


レンは満足げに頷く。


「両陣営を敵に回す可能性もあるが……上等だ」


そのとき――

遠くから鈴のような破滅の音が響いた。


(……カーミラ)


世界が変わる音がする。


この大陸は救いを望むのか――

滅びを望むのか。


それを決めるのは――四人の行動。


冒険は止まらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ