― 四人の旅立ちと“最初の分岐”
戦争から三日後――
王都フラウリアの朝は、驚くほど穏やかだった。
市場には笑い声が戻り、
子どもたちは剣と木の盾を振り回して遊び、
兵士たちは瓦礫の修復を手伝いながら談笑している。
“世界が救われた日常”がここにあった。
なのに、胸の奥がざわつく。
(平和だけで終わるなら、それでいい。
だけどこの世界は――まだ終わっていない)
食堂のテラス席で、いつものように四人で朝食を囲む。
カイはパンに肉を挟んで豪快に食べながら言った。
「リアチー。
今日からどうすんだ?
王都に残って戦力として動くか、旅するか」
レイナはミルクを混ぜながら迷う。
「どっちもあり……だよね。
ここに残ればみんなを守れるし、
旅に出れば、知らない世界を見に行ける」
レンは落ち着いた口調で整理する。
「残る=安定、守り。
出る=変化、情報獲得。どちらも正しい」
みんなの視線が俺に集まる。
俺ははっきり答えた。
「旅に出る」
迷いはない。
ここに残れば、
世界は“俺たちに依存して止まる”。
外へ向かえば、
“この世界の真実”へ近づける。
そして何より――
俺たちは“冒険”を望んでいる。
三人は表情を一瞬で明るくした。
カイ「ひゃっほう!旅の時間だ!!」
レイナ「最高の一日が始まるって感じ〜!」
レン「戦争で得た注目から距離を置けるのも利点だ」
すぐに準備が始まった。
・回復薬
・旅用の食糧
・スクロール
・地図
・装備のメンテナンス
王都の人々は名残惜しそうに見守りながらも、
「行ってらっしゃい」と笑いで送り出してくれた。
騎士団長レオンも門の前に立っていた。
「調律者殿、三戦士殿。
君たちの旅が“世界を導く旅”であることを願う。」
カイは拳を突き出し、
「また戦いたくなったら呼んでくれや!」
レイナは笑顔で手を振る。
「絶対また戻ってくるからね!」
レンは目を閉じて礼を返す。
「次は“助ける側”ではなく“共闘”で会おう」
レオンは力強く頷いた。
「楽しみにしている」
◆
王都を後にし、街道を歩くだけのはずだった。
けれど――ログが突然表示される。
【メインルート発生:プレイヤー主導型】
《四人の選択に応じて世界のメインストーリーが変化します》
内容は三択だった。
▸ A:南の《氷狼山脈》へ
→ 古代遺跡とモンスターの巣窟。高難度ダンジョン。
▸ B:東の《神秘大陸エーテル》へ
→ 未開の大陸。魔法文明の残響と新種族の噂。
▸ C:北の《鉄血戦線》へ
→ 戦乱渦巻く無法地帯。ギルドと国家の争奪戦。
すべてが本編規模。
どれを選んでも世界の今後を大きく変える。
レイナが息をのむ。
「……選ばなきゃ、だよね」
レンが分析する。
「A=純粋な強化
B=世界の真理へ最速
C=勢力図を握る力を得る」
カイは全身を震わせながら笑う。
「どれ行っても面白ぇの確定じゃん……!!
リアチー、どれ行く!?」
三人の視線が、また俺へ向いた。
(どれが正解かじゃない。
どれが“楽しい未来”につながるかだ)
迷わず告げた。
「B。東の《神秘大陸エーテル》へ」
風が強く吹き、草原を揺らす。
カイの目が輝く。
「新大陸!未知の冒険だぁ!!」
レイナは小さく跳ねた。
「一番ワクワクするやつ〜〜!!」
レンは満足げに微笑む。
「情報面でも最良の選択だ。
世界の秘密に踏み込むなら、まずはそこだ」
だがその瞬間――
システムメッセージが追加で降りた。
【注意】
《この選択は“世界のシナリオを書き換えます”》
《以降、すべての勢力は“東へ向かう四人”を基準に動きます》
そして――
【隠し通知】
《選択 B を選んだプレイヤーは現時点で世界に四人だけです》
俺たちは顔を見合わせた。
「四人だけ……?」
つまり――
この世界の“本編”を世界ごと書き換える旅に行くのは、俺たちだけ。
同時にもう一つの通知が落ちた。
【災禍序列:観測】
《災禍序列は、深淵シンエンの選択に興味を示しています》
《神秘大陸エーテルに向かう際、彼らと接触する可能性が高い》
空気が再び張り詰める。
カイは剣を肩に担ぎ直した。
「来るなら来い。ぶっ潰すだけだ」
レイナは笑顔のまま震える。
「でも……4人なら絶対、負けないよね?」
レンが頷く。
「調律 vs 破滅。
そして《災禍序列》。
本気で遊ぼう」
俺は一歩前に進み、宣言する。
「東へ行く。
《神秘大陸エーテル》へ。
世界の真相に触れるために――
そして“俺たちの物語”を選ぶために」
その瞬間、世界が音を立てて動く。
【メインストーリー改変完了】
《第二部:選択編 第1章「東へ」開幕》
《大陸間航海イベントが全世界で解放》
《最初にエーテルへ到達した勢力が、世界の優先権を獲得します》
三人が笑った。
カイ「競争かよ……上等じゃねぇか」
レイナ「絶対1番乗りしようね!!」
レン「誰の物語でもなく、“四人の物語”にする」
海風が草の匂いを乗せて吹き抜ける。
まだ誰も踏み入れていない大陸が、
東の地平線の向こうで待っている。
冒険は――ここからが本番だ。




