戦争後の静寂 ― 揺れる世界と四人の休息
戦場の轟音が消えた夜は、嘘みたいに静かだった。
王都フラウリアに戻る途中――
瓦礫に腰を下ろし、四人は黙って夜空を見上げていた。
視界いっぱいの星。
けれど、戦場の焦げた匂いがまだ風に残っている。
レイナが、ぽつりと呟いた。
「……怖かったけど、でもね……
最後まで4人で立ててよかった」
カイは背中で笑った。
「だろ?
“死ぬほど怖くて、同時に最高だった”ってのが戦いなんだよ」
レンは弓を膝に立てたままで、静かに言う。
「怖いままでいい。
それでも前を向けるなら強い」
俺は三人の音を聴き、胸に刻む。
(恐怖でも、興奮でも、迷いでもない。
“仲間でいたい”という意志だ)
それがある限り、調律は折れない。
◆
王都に戻ると、歓声と拍手が響いた。
「深淵シンエンだ!」「三戦士だ!」「戦争を止めた英雄達!」
兵士もプレイヤーも、
王族ですら駆け寄ってくる。
だが俺は――誰の手も握らなかった。
理由は一つ。
“英雄扱い”は、誰かを傷つけるから。
(俺たちは英雄じゃない。
ただ遊んだだけだ)
けれど、その沈黙すら
周囲には“謙虚な姿勢”として受け取られてしまう。
結果――
賞賛はさらに大きくなった。
王が自ら歩み寄り、深く頭を下げる。
「この国を救ってくれて感謝する。
我々は永遠に恩を忘れない」
その後ろには――騎士団長レオン。
あの誇り高い戦士が、静かに騎士礼を捧げる。
「頼りにしたい。
だが、それが貴殿らを縛るなら……頼らない。
それでも――俺は感謝している」
カイはにやっと笑った。
「そういう言い方好きだぜ、団長」
レイナは照れながら答えた。
「また一緒に戦おうね?レオンさん」
レンは軽く会釈した。
「感謝を押し付けない相手とは組める」
レオンは嬉しそうに笑う。
「――それでいい」
◆
だが、歓迎だけでは済まなかった。
その日の深夜、
王城の別室で、
茶を飲みながら休む四人のもとへ――
大量の書簡(ゲーム内メール)が届いた。
山のように積まれた封筒。
自動生成ではなく“すべて手打ち”。
その内容は、勢力ごとに露骨すぎるほど違う。
・「味方になってほしい」
・「国同士で戦うのを止めてほしい」
・「率先して世界を動かしてほしい」
・「あなたたちを信じない」
・「裏切り者を許さない」
・「味方につけば報酬を与える」
・「拒めば戦争を仕掛ける」
――感謝と依存と拒絶、全部が混ざっていた。
レイナは手紙の内容に胸を押さえて小さく震える。
「これ……全部……
“ハクアくんたちの行動で世界が変わってしまう”って
理解されてるってことだよね……?」
レンが静かに紙束を閉じる。
「つまり、世界は“自分たちで選ぶ余裕がない”。
決定を四人に委ねたい人間ばかりだ」
カイが苦く笑う。
「戦争で勝ったってのに、すぐ依存かよ……
リーダーとしては最悪のタイプだぞ」
俺は短く答える。
「依存も拒絶も妄信も――全部調律する対象だ」
◆
そのときだった。
一枚だけ、他とは違う書簡があった。
封蝋は黒。
差出人の記名は――
《災禍序列》
三人が息を呑んだ。
内容は短く、たった一行。
――“世界を終わらせよう。お前なら分かるはずだ。”
それを見た瞬間、
耳に鋭い“演奏音の残響”が走る。
(カーミラの旋律……じゃない。
もっと深い。
もっと冷たい。)
その瞬間、視界にはシステムウィンドウが強制表示された。
【新情報:勢力《災禍序列》】
《※世界の崩壊を目的とする勢力
※調律者、奈落系統、破滅系統が複数所属
※正体・人数・目的不明
※ハクアとの接触を最優先する動きあり》
【警告】
《災禍序列は運営の監視下にありません》
《行動予測不可》
レイナが息を詰める。
「運営の監視下に……ない?」
レンは肩を震わせる。
「つまり、運営が後付けで見てる存在。
“世界の仕様外”の集団だ」
カイが低く笑う。
「もう最高だろ。
このゲーム、ぜってぇただのゲームじゃねぇ」
俺は封蝋を握り潰し、静かに言った。
「世界は壊させない。
カーミラとも戦う。
災禍序列とも戦う。
だが俺たちは――“世界を遊ぶ”。」
3人が迷いなく応じる。
カイ「決まりだな。誰が敵でも俺ら4人だ」
レナ「あったりまえでしょ〜!!」
レン「壊すか守るかじゃない。“選ぶ”んだ」
そのとき、システムが静かに更新された。
【世界イベント:第二部開幕】
《均衡編 → 選択編へ遷移》
《四人の行動が世界の未来を確定させます》
カイが立ち上がる。
「よし、遊ぶぞ。世界全部を」
レイナが笑う。
「次はどんな冒険かな〜♪」
レンが武器を取る。
「来るなら全部受けてやる」
俺は答えた。
「調律する。
どんな敵でも、どんな混乱でも、
“世界が面白い方へ”導く。」
戦争は終わった――
だが、それは序章の終わりでしかない。




