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リアルチートと、極振りな友人達 〜運営を困らなせる噂のアイツら〜  作者: 暁 龍弥


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感覚の慣らし⑭ ― 深夜潜入戦、影の暗号、そして“心の調律”の覚醒

王都フラウリア ― 深夜。


昼間の喧噪とは違い、

冷たい風が石畳を撫で、街灯が淡い光を落としている。


だが、その静寂は“表面だけ”。


潜伏音、交信音、足音、息遣い――

暗闇の中に違和感の旋律が散らばっていた。


(境界がゆらいでいる。複数勢力が同時に動いている)


建物の屋根の上で、俺たち4人は身を低くした。


レナが夜風に髪を揺らしながら囁く。


「敵……すごく多いね……30人以上はいるよ」


レンは視線を巡らせつつ即座に補足する。


「勢力は三つ。

 プレイヤー王国アストレア、巨大ギルド《アルカ・フロンティア》。

 そして――“第三の影”だ」


カイは大剣の柄に手を置きながら楽しそうに笑う。


「三つ巴か。こっちに向かってるやつらは“誰が味方か分からない”ってことだな」


俺は息を吸い、響く音をまとめた。


(それぞれの目的は違う)


・アストレア → 「ハクア確保」

・アルカ・フロンティア → 「ハクアを看板にして世界掌握」

・影の第三勢力 → 「四人を“どの勢力にも属させないよう隔離”」


敵同士の思惑がぶつかっている。

だからこそ、混乱は最大になる。


そして――俺たちの“偽りの裏切り作戦”はここから始まる。



王城裏門。

闇に溶けた黒い外套の集団が姿を現した。


アストレアの精鋭部隊だ。


隊長格の男が低く囁く。


「深淵シンエン殿――

 我らは迎え入れに来た。王国を捨て、共に来ていただきたい」


フェイク作戦だからこそ、俺は無言で頷いた。


すると彼らの緊張が一気に解ける。


(油断した……この瞬間が“最も脆い”)


だが殺気はない。

彼らは本気で“保護する”つもりなのだ。


たとえ俺の意思を無視してでも。


(利用する、支配する、それでも“味方のつもり”)


曖昧な“正義”ほど厄介だ。

調律の感覚が疼く。


だが――その瞬間。


「待ちなさいよ?」


装飾過剰なローブを纏った複数のプレイヤーが通路を塞いだ。


《アルカ・フロンティア》


先頭の少女サラが笑う。


「シンエンが“離反”して誰につくかを決めるのに、

 あなたたちだけが話すのは不公平じゃない?」


アストレア隊長が険しい声で返す。


「これは外交交渉だ。第三者の介入は――」


少女は割って入る。


「第三者ではないわ。

 この世界で一番“ハクアを必要としている”のは私たちよ?」


その言葉に闘志が走り、両勢力が剣を抜いた。



カイ「よっしゃ、混乱の時間だな」


レイナ「遊び方、はじまる〜♪」


レン「予定通り“争わせて情報を引き出して”終わらせる」


俺は言う。


「三勢力揃うまで待て。

 最後の一つが来てから動く」



サラとアストレアが激突寸前――

その時、影が降りてきた。


無音。

無感情。

黒い仮面の刺客たち。


第三勢力。


リーダー格の仮面が低く告げる。


「調律者は“争わせる餌”ではない。

 隔離させてもらう」


三つの勢力が一斉に動いた瞬間――


俺は小さく呟いた。


「――調和」


世界が震えた。


・剣戟の速度低下

・魔術の詠唱テンポ変調

・刺客の足音周期が同期

・全員の重心が中央に集まる


混乱ではなく――“制御された混戦”。


そこにカイが飛び込む。


「一気にまとめて相手してやるよ!!」


剛剣の衝撃が空気を裂き、

敵同士の攻撃をぶつけ合わせ、衝突させる。


レンの矢は精密に“敵の攻撃方向を逸らす”ように撃ち込み、

戦場の流れを誘導する。


レイナの幸運は味方には補正、敵には微弱な“事故”として刺さる。


俺の調律は、

敵の間合いと味方の戦闘ラインを“最適化”していく。


そして数分後。

誰ひとり戦闘不能にせず――


三勢力全員を地面に膝をつかせた。



アストレア隊長が震える声で言う。


「……戦って……いない……

 ただ、導かれるままに倒れた……」


サラは歯を食いしばって悔しそうに。


「なんで……戦ったのに、負けた気がしないの……?」


仮面の刺客は固い声で言う。


「これは勝敗ではない……支配でもない……

 “調律”だ」


誰も理解できなくとも――

“納得してしまう”。

調律は、相手に“敗北感”を与えない。


だから敵が増え続けるのではなく――

“味方が増え続ける”。


レイナがぽつりと呟く。


「だから……みんなハクアくんに惹かれちゃうんだよね」


カイは笑う。


「戦って気持ちよくなるって最高じゃんよ」


レンは少しだけ恐ろしいことを言う。


「このままだと――世界全員が“シンエンの味方”になる」


(……それは望まない)


戦場を整えるために、

世界から“自由意志”を奪うつもりはない。


だから俺は三勢力全員に宣言した。


「俺は誰のものにもならない。

 味方がほしければ――“自分の意思”で来い。

 俺は俺で選ぶ。

 仲間も、戦場も、未来も。」


アストレア隊長は静かに頷く。


「……奪うのではなく、選ばれる者であれ……か」


サラは俯き、悔しそうで、でもどこか嬉しそうに呟く。


「そんな言い方されたら……嫌いになれないじゃない……」


仮面の刺客は言葉少なく。


「……約定した。

 いずれ、助力を求める。」


三勢力は互いに警戒しながらも――撤退した。



戦闘が終わり、

王都の屋根に戻った4人。


沈黙の中で、レナがぽつり。


「……ねぇハクアくん」


「ん」


「私、強くなりたい。

 “守られるだけじゃなくて”さ。

 隣で一緒に立てるくらい」


その音は――本物だった。


不安でも依存でもなく、

“自分の意思で強くなりたい”という純音。


俺は静かに言った。


「いい。俺が調律する。

 レイナが“レイナ自身の強さ”で輝けるように」


レイナは少し涙を浮かべて笑った。


「ありがとう……!」


カイも肩を叩く。


「そりゃ当然だろ。仲間なんだからよ」


レンは微笑みながら言う。


「依存ではなく、信頼。それでいい」


音が――限りなく美しい調和を奏でた。


その瞬間、視界に新しい通知。


【心象調律システム 解放】

《深淵シンエンは“仲間の心の波形”を理解・支援できるようになりました》

※強制ではなく、希望した時のみ作用


戦いだけでなく――

心まで“整える”。


プレイヤー達が求め、避け、惹かれ、恐れ、願う――

すべての“感情の音”が聞こえる世界。


それは制御次第で、救済にも破滅にもなる。


俺は心の中で答えた。


(感情も“奪わない”。

 整えるだけだ)


4人の視線が夜空の星に向いた。


世界はますます混乱し、

戦争は避けられない。


だが――4人がいるなら怖くない。


「次は、“国家戦争”の始まりだ」


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