感覚の慣らし⑨ ― 王都の“異常反応”と、真のランキング更新
王都フラウリア。
白亜の塔、高層の城壁、街全体を覆う魔力の巡り。
チュートリアルとは比べ物にならない規模と密度。
だが、この街に足を踏み入れた瞬間――
風の音が、まるで震えた。
(……また“音が変わった”)
プレイヤーの足音、NPCの会話、馬車の車輪、
すべての“演算音”が一瞬そろって俺たちに向き――
“注目”の旋律に変わった。
反応したのはNPCからだった。
「……戻られた……?」「隔離されたはずの……」
「いや、記録と違う……この人たちは調律者?」
通りの商人、衛兵、冒険者、街行く民――
全員が俺たちを見る。
だが恐怖ではない。崇拝でもない。
“この4人は危険でも利害でもなく、
世界の流れそのものを変える存在”
そういう見方だった。
カイが頭をかきながら笑う。
「おいおいまた注目浴びてんぞオレらw
リアチーのどこ行っても人気者現象かよ」
レイナは心底嬉しそうに手を振る。
「わぁ〜みんな見てる〜!アイドルになった気分!」
レンは深く分析しながら呟く。
「この反応は“運営の演算ではなく、NPCの自由判断”。
つまり、NPCの思考が俺たちを“特別扱い”している」
NPCの傍を歩くたび、
誰もが道を空け、深く頭を下げた。
俺たちのレベルはまだ“1”のままなのに。
そのとき、視界に通知。
【ランキング更新:世界統合版】
“全プレイヤーの功績・戦闘貢献・回避率・ギミック解除率……”
複合値による世界ランキングが表示された。
本来、初心者には縁のないトップランキング。
だが――
画面に表示された順位を全員が二度見した。
■戦闘影響度ランキング(世界統合)
1位 深淵シンエン(Lv1)
■戦闘貢献総合値(世界統合)
1位 黒峰カイ(Lv1)
■遠隔致死率ランキング
1位 鏡夜レン(Lv1)
■ユニークドロップ獲得回数
1位 三神レイナ(Lv1)
四人全員が、ランキングの全ての一位を独占した。
街にいるプレイヤー達の視線が一気に変わった。
「嘘だろ……Lv1が世界1位……?」
「ありえない……いったい何者……?」
「名前聞いたことある……“チュートリアルを破壊した4人”……」
「都市伝説かと思ってた……実在したのか……!」
噂は一瞬で広がった。
プレイヤーが近づき、声が飛ぶ。
「パーティ入れてください!!」
「フレンドお願いします!!」
「動画撮っていいですか!?記念に一枚だけ!」
「情報提供させてください!!スポンサー契約でも何でも!!」
一気に押し寄せる押し寄せる押し寄せる。
俺は少し身を引きたくなる。
だが、次の瞬間――カイが朗らかに笑って俺の肩を守るように立った。
「悪いな。
俺たちはこの4人で動くんだ。他を探してくれ」
レンも落ち着いた声で続ける。
「情報は求めていない。
それでも俺たちを見たいなら――ただ見ていろ」
レイナは柔らかく微笑んだ。
「フレンドはまた今度ね〜♪
でも嫌いとかじゃないよ?
この4人で冒険初めたいの」
プレイヤーの群れが動きを止めた。
押しのけたのではなく、拒絶したのでもない。
ただ、自然に――
“四人の輪”が“守られた”。
胸の奥が静かに温かくなる。
すると、その瞬間。
視界に世界全体へのシステム告知が表示された。
【全プレイヤー告知】
《特別称号が世界に発行されました》
続けて四つの称号。
・《破調のバーサーカー》 黒峰カイ
・《絶対零度の狙撃手》 鏡夜レン
・《幸運の箱庭》 三神レイナ
・《深淵の調律者》 深淵シンエン
王都中のプレイヤーがざわめいた。
「深淵の調律者……公式が称号として認めたのか……」
「このタイミングで称号実装って異例だろ!?」
「というか称号が“その人たちの役割そのもの”になってる……?」
「運営が勝手に彼らを“そういう存在”として扱い始めてる……」
カイが称号を眺めながらゲラゲラ笑う。
「いや最高だろこれ!!かっけぇじゃん!!」
レイナは賞状でも貰った子供のように抱きしめる。
「幸運の箱庭〜!響きかわいい〜〜!!」
レンは驚きながらも冷静。
「称号の効果を見ろ。
“状態異常無効を無効化する能力”…?
“敵AI行動の変化”…
“ドロップテーブルの増殖”…
そしてシンエンのは――」
俺は自分の称号効果を確認する。
■《深淵の調律者》
・敵・味方・フィールド・ギミック・補正・乱数を“旋律として解釈”し、上書き可能
・上書き結果は“世界側が自然発生したものとして扱われる”
・効果は永続/不可侵/削除不可
カイが叫んだ。
「いや運営!!
なんでそんなバグみたいな称号を公式採用したんだよ!!」
レンが分析を締めくくる。
「……運営は“排除できないから、役割に組み込んだ”。
つまり、シンエンの調律は正式にゲームシステムの一部になった」
レイナはくるっと回って笑う。
「つまり最強じゃん!?」
プレイヤーから距離は取られ、敬意の視線を向けられ、
世界中のログが騒ぎ、ランキングは書き換わり……
だが、三人が横にいるだけで不思議と嫌な気持ちにはならない。
俺は静かに言った。
「……絶対に誤解するな。
俺は、支配でも神格でもない。
ただ――この四人のために調律する」
三人の顔が輝いた。
カイ「そういうとこが好きだわ!!!!」
レイナ「うれし〜〜〜!!!」
レン「シンエン、それが正解だ」
そのとき――
王都の空に巨大なシステムボイスが響いた。
【警告:世界バランスの変動を確認
プレイヤー《深淵シンエン》の動向を注視せよ】
プレイヤー達がざわつく。
「世界が監視されてるレベル……」
「この人たちの動きで世界の難易度が変わるってこと?」
「どうなるんだこの世界……」
俺は王城へ続く階段を見据え、ただ一度言った。
「行こう。
噂がどう転んでも関係ない。
俺たちは遊ぶ。それだけだ」
三人が並ぶ。
・破調のバーサーカー
・絶対零度の狙撃手
・幸運の箱庭
・深淵の調律者
四人の足音が、王都の中心へと向かった。




