#0 どこかにあるべき林檎
いつからか人類史に大きな変化があった。
文明の発展。文化の成熟。人々の活気と知性溢れる生命活動。幾星霜もの歳月を経て人類が獲得した英知・技術そして感情。
それらは大きく失われた。
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人類の滅亡や文明の衰退に関する予言・預言はこれまでに数えればキリがないほどの提唱されてはきましたが、例えばこれまで過ごしていた都市が三日三晩の間に驟雨に攫われ、右も左も判別できぬような光景へと変貌したとして、「ほうら、言った通りだろう」と高らかに自身の預言の正当性を示せるものはいるでしょうか。
災害は神から与えられた人への試練、自然の怒り、然るべき定めの道。そんなことは誰でも言えることでしょう。実際に地球史が塗り替わるという局面に至るにあたっては人類は勿論のことその他の生命体もまた悉く世界の変化から逃れることは叶うことはありません。
衣食住と経済・政治の面で制御と支配を行っていた人類面での自然というのは、ここぞという地球環境の変化に対応できなかった。瞬く間に訪れた氷期。そして再生と繁栄。計算や予想を遥かに上回る世界に取り残された人類は再び然るべき人類史の歩みとして争い、奪い、戦いました。
しかしこれは例えば喧嘩においても同じことが言えますが、やはり相手がいなくてはそれは成立しません。喧嘩が出来ないのに会話も出来ませんよね。会話、つまり人との繋がりというものが減衰した世界ではもはや目まぐるしい発展も繁栄もありません。ひたすらに生存本能の先走った世界とでも言えましょうか。それは人間に限ったことではなく、刹那の永遠に取り残された生き物は互いに生存競争の時代へと移行しました。人間という管理人かつ好敵手である存在が減衰することで真価を発揮しだす生き物など山ほどいます。また、変化した環境に準じて進化する速度を考えれば、人間がもう生態系の頂点に君臨することは出来ないということがわかると思います。
さて、そこで人々の希望の光となった存在。
『林檎の洲』
その唯一絶対の救世を求めて突き進むしかない彼らの姿をどうぞ見やってみてください。