初陣3
残すはドラゴタイプ。
軍服たちがドラゴタイプを囲っている。しかし、優位なのはドラゴタイプだ。ドラゴタイプのブレスで装甲ごと数人が焼き尽くされていく。辺りは肉の焦げた臭いと黒煙が立ち上りドラゴタイプの強さを誇張させていた。
「引くな! 防衛ラインを死守せよ!」
指揮官らしき男が叫ぶ。
しかし、周りの軍服たちの戦意は既にそがれている。そこに立っているのでやっとであろう。
ドラゴタイプの尻尾を薙ぎ払うというもっとも単調で避けやすい攻撃をただ眺める事しかできない彼らがどうこうできるレベルではない。
一人、また一人と装甲が砕かれ無意味に人が死んでいく。
どうしてそうまでして戦うのだろうか?
さっさと逃げればいいのに。
彼らは俺と違って自由があるのにどうして死を選ぶのか?
俺には分からない……。
震える足で前を向く彼らは何を思って戦場に立つのだろうか?
ドラゴタイプが大きく息を吸い込む。大地が揺れ、エネルギー体がドラゴタイプの口元に現れる。それは徐々に大きくなり球体に形成すると帯電しバチバチと音を立てる。
俺は盾を顔の前で構えると一瞬の隙を伺う。
「引け!」
指揮官がブレスを警戒し、軍服たちに指示を出す。
極限まで力をため込んだその一瞬。
逃げ惑う軍服と入れ違うようにドラゴタイプに突進していく。
凝縮されたエネルギー体を盾でドラゴタイプの口元にねじ込む。
「グゴ!」
ドラゴタイプは情けない声を出すと腹が膨れ始め、胸、腕、足、様々な部位が膨張し、最後に頭が風船のようになると俺は刀を頭に突き刺す。
ため込まれたエネルギーは上へと解放され、被害を最小限に食い止めるが血の雨を降らした。
「うおおおおお! やったぞ! 守ったんだ。俺達の手で!」
降り注ぐ血の雨などお構いなしに軍服たちは勝利の雄たけびを上げる。
一つの戦場が片付いただけなのに彼らはどうしてそんなにも喜べるのだろうか?
俺にはやはり分からなかった。
「あ、あの?」
歓喜の雄たけびに気を取られていると目の前にショートヘアーの女が立っている。
「助けてくれて。ありがとう」
「助けたつもりはない。目の前の標的を討伐しただけだ」
「それでも助かったよ」
女は深々と頭を下げる。
「よくやった。援軍の者」
司令官は笑顔で近寄ってきたが俺の右肩にあるストーンズの標章を見ると侮蔑に変わる。
「血ぬ塗られたガキどもか。さっさと出ていけ。ここはお前らみたいのがいるようなところではない」
「そんな言い方は……」
「貴様! 上官にはむかうつもりか?」
彼女の言葉を司令官が遮り拳を振り上げる。
「フロートシステム起動」
風が舞い上がり、俺の体を空中に浮かべると司令官は吹き飛ばされ尻餅をついた。
「き、貴様! 降りてこい!」
俺は相手することなく、輝生通話を入れる。
「討伐完了。帰還を申請します」
「よくやったのじゃ。帰還を受理する」
転送機が光り輝き視界を奪う。