初陣2
戦場を確認するとドラゴタイプの拘束に相当数の兵力が割かれ、残りで何とか維持できている状況だ。
レオタイプ中型
四足歩行の巨大な獣。猫型の生き物が醜く肥大したもの。たいして強くはないが爪による攻撃は少し厄介だったか。
ラドンタイプ小型
古の時代に飛んでいたカラスという動物が巨大化したものらしい。装甲も脆くおこぼれを預かるだけの雑魚だな。
ドラゴタイプ大型
二足歩行のドラゴン。硬い装甲に強烈なブレス攻撃がある。同期が何人か食い殺されたな。
輝生物共通事項
体のどこかに輝生石があり、破壊すれば死亡する。しかし、輝生石は高値で取引される為、くり抜くのが望ましい。
ストーンズでの事が嫌でも頭をよぎる。
戦場を見極めると盾を構え、ラドンタイプを叩き落としながら急降下をする。
「敵か?」
応戦していた軍服たちが騒ぎ始める。
「いえ、識別信号は仲間です。援軍です」
「援軍とは心強い」
戦闘中に会話とは随分余裕な人たちだ。
案の定、その隙をついてレタイプの一体が戦場には似つかわしくない愛らしい顔をした黒髪のショートヘアーの女に飛び掛かる。
軍服の一人がショートヘアーの女に叫ぶ。
「後ろだ!」
つぶらな瞳をしてショートヘアー女は振り返る。
「え?」
目の前にあったのは巨大な腕。鋭い爪が彼女の装甲を引き裂く。
ガキン!
装甲がショートヘアーの女を守ったが吹き飛ばされ、体制を崩す。
「だ……誰か、助けて!」
軍服達がカバーに入ろうとするが、誰も追いつけない。
吹き飛ばされた女はショートヘアーの髪をぶるぶると恐怖で震わせた。
再び、レオタイプがよだれをたらし女に襲い掛かる。
彼女は最後の一瞬を見届けた。
しかし、彼女が見たのは自分の最後ではない。それは黒い閃光。まがまがしく淀んだ光は轟音を鳴らし、風を舞い上げレオタイプを真っ二つに引き裂いた。
「グオオオオ!」
レオタイプは絶命の声を上げるとその体を分離させる。
何が起きたのか理解できなかった彼女は砂塵舞う荒野に黒で統一された武具を構え、まだ自分と同じぐらいの年代のどこか寂しそうな瞳の青年を見る。
彼女は青年に声をかけようとしたが青年は彼女の方を見ようともせず、違うレオタイプを強襲する。
戦場で不謹慎ではあるが彼女の瞳に映っていたのは彼だけだった。
彼が舞う戦場には黒い輝生石の光が舞い落ちる。それはまるで輝生物を死へと誘う黒い霧の様にも見えた。8体いたはずのレオタイプが一瞬にして残骸に変わっていく。
その悪魔の様な強さと彼が持つ独特な瞳が彼女の心を奪い去った。