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デモンストレーション2

 冷却モードに入ります。セツナの再使用は20分後になります。黒刀は輝生通話で冷却時間を伝えガチャガチャと音を立て最低限戦闘が可能な形状になる。


 s902が遠くで俺に手を振ると輝生通話をしてきた。


「流石だね。あんな硬いの一撃とは恐れ入るよ」


「お前こそ、あんな早いのよく落とせるな」


「君よりかは当てやすいよ」


 一瞬で勝負は決したが、輝生石を用いた兵器、輝生具での戦闘はこういうものだ。何年も殺し合いをしてデモンストレーションに立てるのは販売される水準に達した一部の者だけである。


 デモンストレーションに出れたとしても負ければ死を意味し、勝ったとしても買い手がいなければ破棄される。



 俺達は単なる商品に過ぎない。



 試合を見ていたものがオークション形式で俺達の様なものを買っていく。買い手は各国の地域統治者であったり、反乱軍であったり、ギャングであったりとするらしいが興味はない。どこに行ったとしてもやる事は変わらないし廃棄されるよりかは余程ましである。



「それでは皆様、販売の方に映らせて頂きます。今までの訓練戦において攻撃を全てかわしていたj712を見事仕留めたs902の販売から参ります。1億Gから始めさせて頂きます」


 ちょび髭が木づちをもってオークションを取り仕切る。


「317番様5億……。621番様8億5千万……。921番様11億! 他にはございませんか? 無いようですので11億Gでご落札です。おめでとうございます」


 木づちでかんかんと叩き、落札者に拍手を贈るちょび髭。



 11億か流石だな。過去最高額が13億だったか? 歴戦の英雄Z13……。戦場では最も会いたくない相手だが、s902ならいい勝負をするんじゃないか?」


「それでは次に入らせて頂きます。訓練戦でどんな攻撃も凌いだd605を一撃で屠ったk818の販売に入らせて頂きます。同じく1億Gから始めさせて頂きます」


「……」


 s902の時は頻繁に値動きがあったが俺にはどうやら買い手は一人もいないようだ。


「どなたか買い手はいらっしゃいませんか?」


 これも仕方ない事だ。デモンストレーションでよく見る光景の一つ。現戦闘において近距離武器では遠距離武器にまず勝てない。d605の様に防御に特化させることで距離を詰める事ができれば勝機はあるがそれ以外はハチの巣にされるだけだ。弾除けに高い金は払えないし近距離武器に特化した俺を買おうとする者はなかなかいないだろう。それでもわずかには期待していたのかもしれない。



 目をつぶる。


 ここまでだな。廃棄されるぐらいなら死んだ方がましだ。


 輝生通話でs902に呼びかける。



「おめでとう。s902、これからも頑張ってくれ。最後に俺から頼みがあるんだがいいか?」


「何だい?」


「買い手がつかなかったら俺を殺してほしい」


「いいのかい? 廃棄処分になった奴からも売れた奴はいるよ」


「いや、決めてたことだから」


「わかった」


 静寂は続く。


 俺に買い手はつかなかったようだ。


「それではこれにて販売を終了させて頂きます」


 ちょび髭は木づちでカンカンと高らかに鳴らす。



 その瞬間、俺の死は決まった。



 天を仰ぐ。



 ここで終わりか……。



 心は穏やかであった。



「今までありがとう」



 s902が最後の輝生通話をする。



「こちらこそ」


 バンという音が一度だけ鳴り響く。

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