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五つの世界の端々で  作者: ひょっとこクソ太郎
序章 2年 春
9/90

夕日の似合うあいつ 2







階段を降りたところに真っ黒のワンボックスカーが止まっていました。

助手席に座る健治さんの向こう

運転席側からニコニコと笑いながら手を振るリムが覗いている

「リム、間に合ったんですね」

「そうよ〜。今日は喧嘩する子もいなかったみたいで助かったわ〜」

後部座席に乗り込みながら挨拶程度の会話を交わしつつ先に乗り込んでいた由美とソラに続く

車で約30分

この時間なら昨日の海辺まではすぐですね

大太刀を助手席の後ろに立てかけシートベルトを装着する

引っかかる胸が欲しいと息を深く吸い込むがスムーズに装着完了。


「岩村さんが結局見当たりませんが」

「あなた達が出た後フラフラと入ってきて今はアリスちゃんとお昼寝中よ〜」

え、と2人と声が揃う

「その内来るんじゃないかしら〜」

「立派にサボりですよねそれ」

「怒られるのはあの子なんだし良いじゃない?今日は随分と人が少ないわね〜。おまけに魔術師は3人、しかも美空ちゃんと由美ちゃん2人でようやく一人前位だから実質1人。健くん大変よ〜?」

気の抜けた声であらあらと口元に手をやっているがこれは不味いです。

健治さんは無表情ながらやや怒った様に携帯電話を鳴らしています

おそらく相手は岩村さんだとは思いますがこの時間で起きていないなら比較的望み薄でしょうね

「他の先生に頼まないでしょうか」

「入学式の準備があるから厳しいわねぇ。」



これは本当に参りました

私ミリアを含め今いるのは5人

「攻めはほぼ健治さん1人に任せることになりそうですね。」

「ううん、ミリアちゃんも出てもらわないと困るわね〜。私が2人に付くから〜」

「人のいる場所に流れ込みそうなのを由美と2人で止めるから1番前に上井行ってよ。」

「私も絶対逃がさないから!」

意気込むソラと由美には非常に申し訳ないですがこれは素直に心配です

「ジッとなんてしてらんない。亮太の仇は絶対に逃がさないし刺し違えても殺してやる」

冷たい殺気が車内を満たす

小柄な身体のソラから溢れる

亮太さんを失って以来私は身体に力が入らずただ泣くだけでした。

それに対し美空は涙を流しながら、それ以上の血を流し「殺して」きました。

良樹さんはそれを危ない怒りと称して度々諌めていました

「笠木」

男性の声が小さく聞こえる

私の前に座る健治さんが発した様で振り向いてソラに話しかける様に呟きます

「それは誰も喜ばない」

健治さんは普段あまり喋りません

しかし言葉を発する時良くも悪くもそれは必ず人に突き刺さります

それを聞いたソラもハッとなりバックミラーに映っている健治さんから目を逸らしてしまいました

「うん…」

健治さんに聞こえない様な声で呟くと由美が手を取って赤い髪を撫でています

ああ、やっぱり私達はこの片瀬由美さんには逆らえないんだろうなと確認させられます


「まぁ何にせよ今日もお勤めがんばろー!」

空気を変えようとリムが拳を振り上げる

ゴッ

鈍い音が鳴り運転席のルーフが拳型にへこんでいました

「知らね」

外の風景に目を逸らし健治さんがため息を吐きました

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