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五つの世界の端々で  作者: ひょっとこクソ太郎
序章 2年 春
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学校のマドンナ 2

魔術学校は8時半までに校舎内に居なければ遅刻扱いとなり、3回遅刻で欠席1回としてカウントされる

どこにでもある学校の風景のワンシーンではあるがあくまでここは魔術の学舎

大声で遅刻の言い訳をする生徒の声と悲鳴が聞こえる中片足を引きずるように佐久間が教室に入ってくる

「すまん少し遅れた。皆おはよう」

「先生遅刻じゃね?」

「不良教師!」

「うるせぇ!じわじわローが効いてくる苦しさがわかるかガキども!」

騒がしくも和気あいあいとした雰囲気の中、佐久間がA4のプリントを配っていく

ミリアが目をやるとプリントには

「新年度クラス替えデスマッチ」

と書かれている

「あーとりあえず今日は座学なし。去年は何も知らなかったお前達だが今は魔術師の卵だ。当然実力もちょこっとは付いてる。なので今年から月1で裏山とアリーナを使って実技で実力を見る。」

黒板にダラダラと、しかし読みやすい字でプリントの内容を分かりやすくしたまとめをチョークで書き込む

「簡単に言えば喧嘩してもらう。この一言に尽きる。その時々でルールはこちらで決めさせてもらうがそれにも理由がある」

例えば…と言いながらまた黒板に文字を綴る

赤のチョークで書かれた単語は「戦いの基礎」

青のチョークでは「柔軟性」

緑のチョークで「教えたこと」

「教えたこと」には赤と青でぐるぐると囲まれている


「まぁ、普通の学校と同じだ。どんな事を勉強して、それをどう使えるようになっているのかを勝ち残り方式のどつき合いで見させてもらう。はい質問あるやつ!」

パン、と手を叩くと同時にいくつか手が挙がる

「具体的にはどのようなテスト内容か教えてください」

「それは答えられん。てかまだちゃんと決まってない」

「身体動かして戦うって事ッスか!?」

「知らん!ただ頭使って答えろって場合もあるかもな。これ重要」

真面目な生徒は少しずつメモを取りながら。元気な生徒はひたすら大声で質問をしていく

「クラスがさ、A.B.C.Dで分かれてるじゃん?入学の時は本当に適当に振り分けてたんだよ。それを今度から実力順に毎月入れ替わっていくと思ってくれ。だから友人同士で競うことになるから覚悟がいるぞ?」

その一言にクラスが静まり返る

「例えば山口、お前魔力制御がそんな上手くないだろ。逆に鳥谷はその辺り器用にこなしてるけど『今回のテストは魔力制御です』なんて事になったら同じクラスには居られないかも知れないぜ?」

廊下側の席の前後、眼鏡をかけた生徒の机の上に座っている生徒に注目が集まる

「来月にはそうやって2人でつるむ事も出来なくなるかもな」

ニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら佐久間は黒板のスペースにまた新しく文字を書く

「ならいっそ2人口裏合わせて同じレベルの争いをしようとするなら…」

黒板には大きく『ペナルティ』と書かれる

「楽しい楽しい罰ゲームが待ってるぜ?」

メモを取っていた生徒の手も止まり、教室は呼吸音一つ聞こえない静寂となる

「ま、脅しはこんなもんでいいだろ。いい事だってあるんだぞ?」

カツカツと音を立てて新たに『ご褒美』と書かれると再び教室がざわめく

「遅刻見逃し、食堂の食券、更に成績優秀者には!授業用の貸出じゃない自分だけの武器を作ってもらえる。これはデカいぞ」

「先生、そのししゃもみたいな絵はなんですか?」

「え、剣に見えない?」

自らの絵心の無さにショックを覚えつつも佐久間は黒板のスペースを余すことなく書き足していく

「そして女の子には駅前の…えーと何て読むんだこれ。『ラマン』かな?あるじゃん喫茶店。ほらあそこ、オカマのいるとこ。何でも隠しメニューのパフェとかお菓子?を振舞ってくれるらしい」

その一言で女子の動きが止まり

「あーそれ聞いたことある。海外で仕入れためちゃくちゃ高い材料使いまくって売上とかそういうの一切気にしない最高においしいとか」

山口と呼ばれた生徒がそれを口にした途端目付きが一段と鋭くなった女子生徒達の視線が集中する

う、と怯む山口学生を放って佐久間がパンパンと手を打つ

「まぁそんなわけだから。月末になるか月初になるかまだ分からんが追って連絡する。それまで各自しっかり授業に励むように!」

いつの間にか記入していた出席簿を閉じ教室を去ろうとする佐久間に後ろから声がかかる

「先生、この話Cクラスの友達が春休み前に聞いたって言ってたんですけど」

「さぁ次の授業の準備だ!これから忙しいぞぅ!」

ローキックの痛みとは何だったのか、風のような速さで退散する佐久間の後ろから大量の文房具が飛来する

当たるより早く引き戸を閉め逃げていった佐久間に怒号の嵐

「ふざけんな不良教師!」

「給料受け取るなよ?絶対だぞ給料泥棒!」

「先生最低!」

「うっせーバーカ!バーカ!」

廊下の遥か遠くまで走り去った佐久間の子供みたいな叫び声も、この1年で聞きなれたものだな、とミリアは冷ややかな視線を送る

Aクラスの担任は1年の時から佐久間先生

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