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五つの世界の端々で  作者: ひょっとこクソ太郎
序章 2年 春
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海辺の墓標

大きな戦いの犠牲者はわずかに1人

その1人のためなら地球上の全員を犠牲にしてもかまないと本気で思っていた

川元亮太さん

もう会えない、ひねくれた、よく笑う正義の魔術師

「ここ、サスペンス用の崖だとずっと思っていたんだけどな」


潮の香りが鼻をくすぐる切り立った海辺の崖の上で関根さんがぼやく


彼方に見えるそびえ立った塔と重なるように一本の剣が突き刺さっている

学校から場所は変わってここは海

本日から数日関根さんとカライドは「魔界」に赴く


「ファンタジーな世の中にはなったもんだよ」


ぼそりと呟く岩村さんに金髪を少し揺らしながら上井さんが頷く


「あらよっと」


ザクリ、と音を立ててカライドが一振りの斧を剣の横に突き立てる

その他にも数十本の多種多様な武器がズラリと並んでいる

ここに来るたび供養のつもりか、彼は必ず武器を置いていく


「気を付けて行ってきて下さい。あとカライドも」


「おう」

「ミリアさんも、ちゃんとご飯食べて身体には気を付けてね」


ぶっきらぼうなカライドと違い関根さんは必ず私に気を遣ってくれます

辛いのは同じなのに、強い人です


「せ、関根くん」

「あっ…」


心細そうに声をかけるのは「ほぼ彼女」の由美さん

サラサラと靡いている綺麗な黒髪は女の私から見ても羨ましい

関根さんは非常にしっかりした人です

もちろん人なので弱いところもあるのでしょうが由美さんが支えているから、強くあれるのだと、私は思います


「……」

「……」


いや喋らんのかい

思わず心の中で突っ込みを入れてしまう

お互いが知り合ってどんだけ経つと思ってんですか

もう1年は経つでしょうに


「今日はインゲン豆とシーチキンをマヨネーズで和えといたから、栄養バランス大事だからね。あんたは言わなくてもわかってるだろうけど」


並ぶ武器の中心の剣の前に美空がおかずを供える

その横に私は少し形の悪いおにぎりをそっと置く


私の大切な人、川元亮太さん

2年前はじめてお会いした時は何かと突っかかっていました

「貴方がいないたら私は誰に従えばいいのですか?教えてください…」

口の中で唱える位の大きさの呟きは潮風に消えていきます


片瀬さん…

関根くん…

お互いそう呟くだけの2人

見つめあい始めてそろそろ1分ぐらい経ちそうですねあの2人

入学してすぐから青春して学校では半ば公認カップルのこの2人

そろそろしばきたい


「おら、とっとと行け」

関根さんに蹴りを入れられつんのめって片瀬さんに抱きつく形になった関根さん

避けるでもなくすっぽりと腕の中に収まる華奢な由美さんは耳まで真っ赤になってしまいました


「んじゃあちょっくら行ってくる」


トンと崖から飛び降りてカライドは岸につけてあるボートに乗る

20メートルはあろうかと言う崖を飛び降りる辺りさすが魔人です

やや肌が浅黒い少年、カライド

種族は魔人

亮太さんによりこの人間界に召喚された彼の故郷は魔界

魔界は人間界と最初に和平を締結した世界で、今回関根さんが書類を持って行く役目を担っているらしく、カライドが付いていくのは護衛のつもりだと思います


「じゃあ、行くね」

「はい、お気をつけて。必ず帰ってきてくださいね」

もちろんだよ、と微笑む関根さんは女性ならグラッと来てしまう程爽やかで、それを返す由美さんは男性なら思わず振り返るほど可愛らしい

つくづくお似合いですねこの2人は


別れを惜しみつつ離れ、岩村さんと上井さんに目配せをしたあと関根さんもカライド同様飛び降りていく

親切に設計されたスロープを使えば良いのに、とは言いません


ボートのエンジン音が響いて遥か向こうに見える塔に向け2人は離れていく

残された5人は来た道を戻るため踵を返す

明日からまた学校です









新設魔術学校

日本のとある場所に建設された魔術師育成機関

13歳から20歳までの間魔術を学び、将来魔術師となる者を育てるための学校

一般教養や国家資格なども手広く学べるがあくまでメインは魔術師

小学校卒業後全ての学生が入学の権利を与えられることになるが決して強制ではない

2年前魔界に住む魔物と呼ばれる怪物を従えた悪い魔術師が人間界に侵攻してきた際、公にされる以前から存在した魔術師が侵攻を食い止めるため尽力し、そして勝利した

その際に生じたトラブルを1人の少年が自らの犠牲を払って終息させたのを機に新たなる脅威が訪れた際、常識の外側の攻撃から人類を守るために後身の育成を目的とした魔術学校は現在日本有数のマンモス校となっている


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