2話
~雫部長視点~
会社全体を揺るがす問題を持って、出勤して来た夜宮 桜。
夜宮は、私がこの総務課の部署の部長になった時から居る古株だ。
入社して、即総務課に回された会社始まって以来初の無能すぎな社員…と、いうのが我々の間での認識だ。
実際は、何でも出来る故に社内で落ちこぼれ評価の総務課を変えて欲しくて総務課へ配属されている。
そう父が言っていた。
…父に聞くまで、無能だと私も思っていたが…。
こうして、夜宮の上司となりその仕事ぶりを見た後では、とても無能だとは思えない。
父の言う通りだった。
私より有能な夜宮。
そんな夜宮が持ち込んだ一件は、問題児だった前任の部長の残した物だった。
前任の部長は、…社内の複数の女性社員と不倫していた。
しかも、ほとんどの女性社員を脅して付き合ってたらしい。
その事が発覚して、海外へ転勤になったんだが…。
発覚した理由は、会社を退職したとある女性社員の記録が父宛に届いたからだ。
その女性が、瑠奈の母親だろう。
…筆跡と辞めた時期、理由、末期ガン…当てはまる事が多い。
正直、父に話さなければいけないのが辛い。
何せ、前任の部長は父の弟だったからだ。
私の叔父にあたるが…、すでに縁を切っているから考えるのも嫌になる。
しかし、夜宮が覚悟を決めているのだ。
私が嫌がっている場合ではない。
私も覚悟を決めて、父に話をしないと。
…腹違いの従妹になる瑠奈は、本当に夜宮に懐いているようだった。