1話
「何か変な夢を見た気がする…」
私は、赤ちゃんを抱っこし会社へ向かいながらそう呟いた。
あまり覚えていないが、妙にリアルな夢だった…気がする。
そうそう、この子…瑠奈ちゃんは私にすぐ懐いた。
人懐っこい子なのだと思う。
まさか、母親と勘違いしてないよね?
「まぁまぁ♪」
「ただ、単にまぁまぁ言ってるだけ…だよね?」
ちょっと、不安になりながら会社に着き私の働く部署へ向かう。
その間、行き交う人々に驚かれてたけど…。
絶対後で色々噂されるな~。
そうして、目的地に着き同僚達が固まる中今の上司である女部長の所へ。
「夜宮…お前、子持ちだったのか?」
…我らが部長の立川 雫は、この会社の社長の一人娘で凛々しくて、仕事も出来て…しかも美女。
同性に特にモテるし、現在同性の恋人が居るらしい。
部長がたとえ、同性愛者な人だろうとそうでなかろうとどうでもいい。
というか、興味ないし。
そんな事より…
「いえ、今も昔もこの先もずっと独り身です。この子は、昨日玄関前に置き去りにされてた…、前部長の不倫相手との子供らしいです。」
私の言葉に、周囲が凍りついた。
「……詳しく説明してくれないか?」
そう言った部長は、頭を抑えなんだか疲れていた。
なので、子供の母親からの手紙を渡した。
読み終わった部長は、先程よりも疲れている気がする。
「雫部長。どうしたらいいですかね?」
「…とりあえず、その子はお前に懐いているようだし…、しばらく預かって…」
「私にこの子をこのまま押し付ける気ですね?」
「っ…」
部長はちょっと焦っている。
「…もし、この子を元部長家族が引き取らないなら…私が引き取って育てますよ。」
私の言葉に、周囲がまた固まった。
そんなに、驚かなくてもいいのに…。
「夜宮…、分かった。そこまで覚悟しているなら、私も覚悟を決める。」
「?頑張って下さい?」
何の覚悟を決めたのか分からない部長。
私は、とりあえず応援してあげた。
何だか、瑠奈ちゃんは私が引き取る事になりそうです。




