冬使用。
Run away!のアキトとヒロキの話。
なんとなく授業が暇で、学校をでてきた。
学校サボったりしてるなんて言ったら兄は怒るだろう。
「あ。」
本屋の片隅に見慣れたパーカーを着た人がいる。
ヒロキだ。
声をかけたい。
①『ヒロキ、おはよ!今暇?』
②『あれ?ヒロキじゃん、偶然だな!』
③『ヒッロキー☆出会っちゃったね☆』
④『おーい、ヒロキ、おはよう!』
「ヒ、ロキ〜げ、げんき〜?」
頭が混乱しておかしい声のかけかたをしてしまった。
ビクッとするとすぐにこちらを向く。
「あ、アキト。」
「偶然だな。」
少しニコッと笑ってくれた。
しかしその顔の眉間にシワがよる。
「…今日、平日だよね。」
ギクッ。
ばれた。
「いや、今日は学校休みでぇ〜…………嘘です。」
ヒロキには何故か嘘をつけない。
「アキトってさ…やっぱその、ピアス開けてる人とかと絡んでたりするの?」
「…不良と絡んでるっていいたいの?」
遠回しに言おうとするけど、うまく言えないんだろうな。
「ケンカとかさ。」
「…まあ、たまにするけど、別にばれない程度だし。」
ああ、引かれてる。
しょうがないだろ、殴りたくなるんだから。
殺さないだけまだマシだ。
「そ、そうなんだ…」
「あのさ、今暇?」
「え?う、うん。」
「じゃあ、どっか遊びに行こうぜ!」
ヒロキと遊んだ事が無いと思っていたところだ。
「学生服でぶらついていいの〜?」
「周りはヒロキが思ってるほど不良に目は向けてないよ。」
そう、冷たすぎるくらいに。
「そうなんだ…。」
「ヒロキ、パーカー寒くないの?」
今は冬に近い秋なのに、パーカー一枚だ。
俺もまあセーターしかワイシャツの上にきていないが。
「冬使用。」
生地が少し厚いらしい。
「セーターあったかそう。」
「着てみる?」
「アキトが寒いよ?」
「ワイシャツで平気。」
とはいったものの少し寒い。
「パ、パーカー着させて。」
あ、あったかい。
「なんかすごいぶかぶかする。」
「そりゃその中にワイシャツとか着るからな〜。」
ヒロキが学校通ってたら、きっとこんなんなんだろうな。
…でも、ヒロキが元から高校に入ってたら、関わる事なんてなかったんだろうな。
「ヒロキ、高校から学校行くつもりないの?」
「学力が追いつかないかな。」
案外間に合いそうだったりするんだけどな。
きっと、それだけじゃなくてお金の事とか気にしているんだろう。
「じゃあ入るなら大学からか。」
「そうだね…。」
その頃には、18歳。
酒がもうすぐで飲める年だ。
「あと四年か。」
「そうだね。」
「あと四年待てば、一緒に勉強できるな。」
待つよ、いつまでも。
「…そうだね。」
少し、嬉しそうだ。
「よし、何処にいこうか!」
「カ、カラオケ!」
「いいね!今の時間なら空いてるし!」
少し気が弱いけど、しっかりとした意思を持ってる俺の友達だ。
学校サボってカラオケ行くとあまりに空いていてびっくりする。




