過酷なミニゲーム
なんてことをしてしまったのだろう。
ゲームとはいえ、人を殺してしまった。
通常のゲームだと敵を倒すと爽快なのに、これは実際に自分が殺してその感触がある。
血の生暖かさが気持ち悪い。
べっとりと制服についた血が気持ち悪い。
そして目の前の二体の遺体が・・・痛々しい。
潤は自分の手を見つめ、自分が今他人から見たらどんなやつなんだろうと考えた。
短慮な行動が招いた結果、俺は殺人犯になって、きっと殺している時の顔ときたら鬼のようだったろう。
いや・・・これはゲームだ。
これはこのゲームのイベントのようなもので、この殺人は必然的なものだったんだ。
俺の意思には関係なく、ゲームのイベントで起こったものなんだ。
必然的だったんだ。
二人を殺した罪は、そう重く感じる必要はないのだ。
そう、これはゲーム。
さっさとこんな世界とおさらばしよう。
この世界で友人だった二人がもういない、こんな気味の悪いイベントが起こるこんな世界にもういたくない。
潤は立ち上がりしっかりした足取りで公園を去ろうとした。
しかし妙な気配がした。
はっきりとしない不気味な気配。
恐る恐る気配を感じる方を向くと、町内掲示板があるだけだった。
そこにはゴミの日や町内の行事の張り紙がされているだけで、誰が立っているわけでなく、ただ掲示板があるだけだった。
しかしその中に妙な張り紙がある。
一枚だけ白紙なのだ。
潤はじっとその紙を見ていると、徐々に文字と写真が浮き出てきた。
そしてその白紙だったものはハッキリしたものになった。
潤は驚愕した。
その紙は、自分のことを指名手配犯だと記している。
写真もある。
しかも『この顔にピンと来たら110番』ではなく、まるで西部劇に出てくるような指名手配。
“WANTED”
“DEAD OR ALIVE”
目を疑った。
徐々に指名手配書は消え、新たに文字が浮き出てきた。
潤はボソボソと声を出して読んだ。
「ミニゲーム始動。
あなだは生死は問わない指名手配犯となりました。
多くの人があなたを狙います。
1日攻撃を避けながら上手く逃げてゲームをクリアしてください。
もしクリアできれば、この事件はなかったことになります。
この事件が起こる前の日に戻ります。
しかし死んでしまいますとゲームは終了します。」
ダァァン!!
読み終えると銃声が響いた。
そして同時に左腕に激痛が走った。
まるで電気が腕を這い回っているような痛み。
潤は右手で腕を押さえると右手にべっとりと血がついた。
これは健二の血でも真央の血でもない、紛れもなく自分の血。
さっきまで見ていた掲示板にも、小さな穴が開いている。
弾痕だ。
後ろを振り向くと警官が銃を潤に向けていた。
「こ、こんなミニゲームあるかよ!!」
潤は茂みに入り、公園を突っ切り道路へ飛び出した。