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人生ゲーム  作者: 柚樹
4/11

ゲームの世界

目を開けると自分の部屋だった。

目の前にはゲーム機がある。

ヘルメットはそのゲーム機の上にあって、頭にはない。

辺りを見回すといつもの自分の部屋だ。

本当に俺はゲームの世界にいるのか?

時刻を確認すると8時だった。

カーテンの隙間から日の光が差し込んでいるということは朝の8時。

俺がゲームを始めたのは夜8時だ。

いや眠っていたら朝になったとか・・・?

潤は疑ってかかったが、すぐに実感した。

ハンガーにかけてある制服がS高校の制服じゃない。

N高校の制服だ。


「そうだ。俺・・・N高の生徒じゃん」


 そう認識し、記憶が変換された。

もう自分がS高の生徒だという記憶が、この世界ではなくなったのだ。


「おーいジューン!!早くしろよ遅刻すんぞー」


 外から男の声がする。

潤は窓を開けて覗き込んだ。

見たこともない、N高の制服を着た男子生徒が自分を呼んでいる。

なのに潤の頭に名前が過ぎった。


「わりぃ健二!!今きがえっからー!!」


 彼は北元健二。

N高で友達になった、今や俺の親友だ。

健二は野球部のルーキーで、高校球児らしい坊主頭が汗と太陽の光で煌いている。

潤の頭に“北元健二”に関する記憶がインプットされた。

 着替えを済ませ、扉を開け階段をせわしなく下りる。


『本当に自分の家だな・・・』


「潤、朝ごはんにこれ、持って行きなさい」


「あ、おはよう」


 母親がダイニングから現れた。

手にはサンドイッチをつめたタッパーを持っていた。

そのタッパーを潤に持たせ、笑顔でおはようと挨拶をした。


「ったく、ちゃんと起きなさいよね。

迎えに来てくれる友達がいるんだから。

それから、母さん今夜夜勤だから。

夕飯は作っておくからチンして食べて?」


「ありがとう。行ってきます!」


『あれ・・・?』


 性格まで変わってしまったようだ。

普段なら、悪態ついて、金を出させ外食するのに。

まるで受験勉強前の自分のようだ。

学校だけでなく、性格・交友関係も変わった。

玄関を開けると、潤は健二とはずっと前から友達だったように挨拶をした。

潤と健二は登校中テレビの話やスポーツの話で盛り上がった。

不思議なことに、そういった話題も現実世界と共通していた。


「潤!北元君!おはよう!!」


 背後から女の子の声がした。

振り返ると、女の子がセミロングの黒髪を揺らしながら二人に駆け寄ってくる。

N高校の制服を着ている。

息を切らし、頬を染めながら笑顔でまたおはようと挨拶した。

この笑顔がなんて可愛いんだと潤は見とれた。


「朝から走ると気持ち良いね!

で、何の話してたの?」


「他愛もない話だよ。な、潤」


「そうそう。」


「じゃあ私もその他愛のない話に混ぜてよ。」


「いや〜俺は先行くわ。」


 健二は女生徒と潤を交互に見た。


「じゃな!真央!潤!」


 そう言って健二は駆けていった。


「なんだよあいつ。」


「北元君、私達に気をつかってくれたのよ」


「え?」


 真央と呼ばれた女生徒は潤の手を絡めるように握り締めた。


『もしかして・・・彼女?そうだ真央は・・・俺の彼女だ。』


向居真央。

彼女とは同じクラスで、入学当初席が前後になったのをきっかけに親しくなった。

そして俺の彼女になったのだ。

新たな記憶がインプットされた。

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