桜の木の下で・・・
あなたは大切な人との思い出を覚えていますか?
それが悲しい別れだとしても・・
その人と過ごした思いで忘れずに過ごしていますか?
桜舞う季節に、彼女はよく公園に行く。
彼女にとってそこは大切な人と初めて逢った場所、思い出の場所・・・
今は傍にいないけど、この季節がくるたびに一人で行っている。
桜の下にあるベンチは私と彼の特等席だった
ベンチに座ってはらりはらり舞い散る桜を見上げる・・
そうするたびに涙があふれ、大粒の涙が流れた。 ・
悲しい記憶は消し去りたい・・何度も忘れようとした
だけど、大切な人の笑顔が浮かび上がる、そのたびに涙が止まらなく流れる
こんな気持ちになるのはもうこない・・・
あなたに逢ってから・・・・
「桜ちゃん、今日はあがっていいよ」
「はーい、お疲れ様でした」
遅番の夜にホールの片づけをしていたところ
勤務時間終了になっていたから店長から知らせてくれた
自己紹介を遅れました
彼女の名前は青野 桜
彼女が働いている店は普通のカフェだが従業員がやけに女性が多い
桜は更衣室に行き帰り支度をした。
店の勝手場から出で帰った、季節は春を迎えたのに、まだ夜は肌寒い。
―――うう・・寒い、薄着で行くんじゃなかった・・―――
白のカーディガンに薄ピンクのワンピースを着ていた
そりゃー寒いわこの季節は夜になったら冷えるもんね
店のあちこちに「さくらまつり」「花見フェスタ」という文字が飾ってある
そう、季節は春を迎えていた
―――私はこの季節が一番好き・・・・だって・・・・
歩いていた足を止めある桜の木の前に立った
――――千年桜・・詳しくはわからないけど、千年前からあると聞いている
あの日から、桜が咲く季節になると毎日来ている
雨の日も、寒い日も、・・
桜は目の前の桜にお参りしているかのように両手を合わせて拝んでいる
桜のジングス・・・
――――よし、これでOKっと・・・また来ます
そう心で呟いた
街は桜色に染まっていた
公園にはブルーシートを敷いて花見をする人が増えてきた
桜はバイトをいつもより早く仕事を終えて帰っていた
いつもと同じくあの桜の元へ行った
―――あれ?先着がいる―――
桜が行く公園の千年桜はあまり人が来ない。
桜だけの秘密の場所だった
しかし、その場所に知らない男の人がベンチを座っていた
緩いジーパンにグレーのロンーTに、白のマフラーを身につけた
黒髪に、二十代くらいの綺麗な顔立ちをした人
桜は彼を見た瞬間足を止めて、きた道を引き返しそのまま家に帰った。
なぜか、近寄れない・・踏み入れられなかった
初めて見かけたとき薄く照らされた月明かりに揺らめいた
彼の悲しげな横顔が今も目に焼きついている
―――――忘れもしない・・私の記憶――――