なろう改善案 ~魔の減点方式ランキングシステムなんてのはどうでしょう?
日本人は一般的に温厚な国民性を持っていると言われています。犯罪は少ないですし、協調行動を重視すると言われていますから、そう思うのは当然でしょう。
ところが、それに疑問を投げかける意外なデータが存在します。
ゲームの販売サイトなどでは、ユーザーがゲームを評価をしたりレビューを書いたりできるのですが、そこでの日本人の評価を観てみると非常に厳しい事が知られているのです。日本人の付けた点数だけ、異様に低いのですね。
しかし、これをつぶさに検証すると、決して嫌がらせで低い点数を付けている訳ではない事が分かるのだそうです。悪い点を指摘しメーカーにフィードバックしようとしている姿勢が見て取れる場合が多いのだとか。
――そして、残念な事に、満足した場合は特に何かを主張したりはしない……
とどのつまりは、日本人は作品を“減点方式”で評価しているようなのですね。ダメだった場合だけ、指摘をして減点をする。
僕はこの話を聞いた時、日本酒の評価が“減点方式”であるという話を思い出しました。ワインの評価は加点方式ですから、もしかしたら日本人は“減点方式”で作品を評価をする傾向が強い国民性を持っているのかもしれません。たったこれだけの事例ではなんとも言えませんが、小説家になろう界隈で、このような主張を耳にした事なら数度あります。
「自分なんかが作品をポイントで評価するのはおこがましいので、毎回ポイントは入れていません」
小説家になろうは、完全な加点方式ですから、これだと評価0点と同じ事になってしまいます。ですから、もしこんな人が他にも大勢いるとするなら、“面白い”と思っている作品に対し0点を入れている人が大勢いる事になってしまうのです。
……これでは面白い作品が埋もれてまっても不思議ではありません。
随分前から、小説家になろう内での評価ポイントと世間での人気に乖離のある作品が多数見られるようになっているのですが、これがその大きな原因の一つになっているのかもしれません。
もし仮に、日本人に減点方式で作品を評価する傾向があるのだとすれば、小説家になろうも減点方式で作品を評価するシステムも採用するべきでしょう。
――さて。
小説家になろうはじわじわと衰退をし続けています。なろう原作はあまり売れず、ビジネス的にはコミカライズ依存が明確になって来ており、だからでしょうが、アクセス数も減って来ています。
その最大の原因は“ランキング上位に似たような作品が多すぎる”点ではないかと思われます。その所為で、一部のジャンルを嗜好するユーザー以外を遠ざけてしまっているのですね。
前述した通り、日本人は“面白い”と思っても、その評価を明確な形で表そうとはしないのかもしれません。が、“仲間と共感”する目的ならばその限りではないようです。いえ、むしろ積極的にアピールするようになるのではないでしょうか? これが事実ならば、『小説家になろう内でコミュニティ化した登録者達に人気のある作品だけが高ポイントを得られる環境になってしまっている』という事になります。
当然ながら、コミュニティに人気の作品以外はポイントが入らず、自然、“似たような作品ばかり”になっていってしまう……
女性は共感力が高いと言われています。ですから、もし仮にこのような現象が起こっているのなら、“女性向け作品”がなろうでは有利になるはずですが、実際に女性ユーザーは全体を観れば30%強といった程度であるにもかかわらず、なろうランキングの上位作品には“女性向け作品”が多くなっています。
なろう運営もその問題を自覚しているのでしょう。だからこそ、ランキングシステムの改変を行ったと考えるのが自然です。ただ、それは成功しているとは言い難い状況です。本来なら、“売れた作品”に高評価を付けた人だけのランキング…… つまり、“評価能力の高い人だけのランキング”を作ればベストなのかもしれませんが、システム構築のハードルが高いからか、実現しようとする動きはありません。加点方式のランキングで優良な作品を抽出したいと思ったのなら、ユーザーにポイントを入れたくなるような工夫…… 例えば、ポイントを入れるとその作品のオマケが観られるような機能があれば、今のままのランキングでも多少はマシになるでしょうが、何故かそれもしようとしません。
或いは、なろう運営は、なろう内に生まれたコミュニティに配慮するあまり、大胆な改革を行えなくなっているのかもしれません。
恐らくコミュニティ化が進んだ状況下で、加点方式のポイントランキングだけのままでは、なろうから多様な作品の発信はできないでしょう。しかし、減点方式のランキングならば、この状況を改善する効果が期待できます。
では、まず減点方式のランキングにどんな特性があるのかを考えてみましょう。
1.全てのジャンルの作品に公平にチャンスが生まれる
加点方式のポイントランキングは、上位に上がれば上がるほどより目立つ事で有利になっていきます。これを“正のフィードバック”と言うのですが、その為、下位の作品との間に凄まじいポイント差がついてしまい、下位の作品はほとんど読まれる事すらないまま埋もれていってしまいます。
これに対し、減点方式では上位になればなるほど不利になるという“負のフィードバック”になります。これにより、上位の作品は減点される事で順位が下がり、代わりに下位の作品がランクアップし上位に入り、評価を受けるチャンスを得られます。
つまり、「なろうの人気ジャンル以外の作品にもチャンスが生まれる」という事になります。すると「なろうでは自分の作品は絶対に評価を得られない」と考えて避けているクリエイターも参加するようになる可能性が出て来るのです。
もちろん、これは作品の多様性を促します。
2.不正が困難になる
これは運営が正式に認めているのですが、なろうにはポイントを不正に加点する業者が存在しているのだそうです(今もいるかどうかまでは分かりませんが)。
しかし、減点方式の場合はこの不正な加点が難しくなります。対象の作品のポイントを相対的に高くしたいと思ったら、それ以外の全作品に対してマイナスポイントを入れる必要がありますが、数が非常に多くなるのでコストが膨らむのです。
また、もし仮にそれでも一部の作品のみを有利にする為に他の作品全てを(ツールを使用するなどして)減点するような行為をした場合、大いに目立つので“不誠実な評価者”として除外する事が可能です。
3.イベントに向いている
加点方式の場合、特定の作品しか読まれないので非常に不公平な評価になります。ですからコンテストには不向きです。が、減点方式の場合は幅広い作品が少なくとも一度はトップ層に入る可能性が高くなり多数の読者に読まれるようになるので、コンテストにも向いています。
ただし、その際に気を付けなくてはいけないのは“単純なポイントでの評価はできない”という点でしょう。
減点方式はトップ層の作品が不利になる為、優秀な作品であったとしても順位が下がります。絶えずトップ層が入れ替わるような現象が起こるはずなのですね。その為、どんなタイミングで評価を打ち切るかによってトップ層が変わってしまいます。
ですから、トップ層に作品が入った総期間の合計で評価するべきなのです。目立てば目立つほど不利になるとは言っても、良作であるのなら順位が下がる速度は遅くなるはずですし、入れ替わりの中で再びトップ層に入るようにもなるでしょう。もちろん、その他の分析も面白いかもしれません。賛否両論ある作品を抽出したり、評価回数の多い作品を抽出したり。それぞれで賞を用意してみても良いかもしれません。
さて。
減点方式ランキングには、以上のような面白い特性がありますが、実際に活用するのには工夫が必要です。
まず、どんな作品でも初めは“満点状態”なのでランキングが始まるタイミングは同じにしなくてはなりません。そうじゃないと、遅れて参加した作品は絶対にトップから始まる事になります。また作品数が多過ぎるとユーザー達が評価し切れないでしょうから、参加できる作品は1ユーザーに対して1作品、文字数は十万文字以上…… だとかいった制限を設けるべきでしょう(完結済み作品に絞るのも有りかもしれません)。
これらを踏まえると、作品のエントリー期間を設け、その間に登録した作品のみが、減点方式ランキングに参加できるというシステムにするのが良いかと思われます。
ランキングが始まった状態では全作品が満点状態なので、「初期順位をどうするのか?」といった問題がでてきます。ランダムにしても良いかもしれませんが、「文字数が多い作品ほど、読み終えるのに時間がかかる」点を考慮するのなら、“文字数が多い順”が適切であるように思えます。
ランキングを実施する期間は作品数にもよりますが、2~3ヶ月辺りが妥当ではないでしょうか? ポイントがランキングに反映されるタイミングは数時間毎とし、できるだけ多くの作品に読まれるチャンスを作るようにします。
ある程度時間が経ったら(一か月ほど?)、不正なポイント操作を行っている(短期間で膨大な作品を評価している、ほとんどの作品に低い評価を付けている等)と思しき評価者を判断し、それを“不誠実な評価者”として除外できるようにします。
“不誠実な評価者を除く”チェックボックスを設け、ここにチェックが付いている場合は、“不誠実な評価者”を除いたポイント及びにランキングにするのですね。
このようにすれば、より公平に作品が評価され、多くの作品が多数の読者の目に触れるようになるはずです。
副次的な効果ではありますが、このようなシステムにすれば、以下のような効果も期待できます。
1.手抜き作品を出版する事態を防げる
小説家になろう作品では、何度も作品を投稿し、人気が出たもののみを連載し続けるという手法でランキング上位に入っている作品もあるのだそうです。その為、粗製乱造になってしまい、なろうから出版されている作品の何割かは「素人の手抜き作品」になってしまっているという問題点があるらしいのです。
この減点方式ランキングのシステムでは、一作品しかエントリーできないので、自ずからそのような手法は取れなくなります。力のこもった作品を作者は投稿するようになるでしょう。
2.埋もれた良作を発掘できる
小説家になろうでは一部のジャンルしか正当に評価を受けられないので、数多の優秀な作品が埋もれてしまっている可能性が充分にあります。それはなろうにとっても、社会全体にとっても損失でしょう。
加点方式ではそれら作品を発掘するのは非常に難しいですが、減点方式ランキングでは目立たない作品の方が有利になるので、そういった作品を発掘できる可能性が上がります。
3.不正ユーザーを特定できる
先に述べた通り、小説家になろうの運営が公式に「不正にポイントを加算する業者」の存在を認めています。またそうじゃなくても、小説家になろうでは、組織や複数アカウントによる不正ポイント加算が行われているとも言われています。
そういった“不誠実な評価者”を炙り出すのは今のままでは難しいかもしれませんが、前述した通り、減点方式ならば比較的行い易くなります。そしてそうやって炙り出した“不誠実な評価者”を加点方式ランキングの方にも適応して、除外できるようにすれば、よりランキングが健全になり、優良な作品を抽出し易くなります。
近年、日本の漫画やアニメが世界的な人気を獲得して来ています。アジア、アメリカ、ヨーロッパといった国々だけじゃなく、なんとアフリカにでさえ多くのファンがいるのだとか。
――そうなって来ると、当然ながら、漫画、アニメは日本の輸出産業としても馬鹿にできない規模になって来ます。
つまり、漫画、アニメの品質維持は日本にとって非常に重要なのですね。それを考える上で、残念ながら近年の“小説家になろう”は「あまり貢献していない」と言わざるを得ない状態になっていると思います。海外にも受けている“軽いヒット”と言える作品は確かに出ていますが、数字には表れていないコスト…… 特に優秀な漫画家の浪費が激しすぎるからです。
ラノベ作品のコミカライズが当たり前になり、新人漫画家のデビューが比較的容易になったという点については、小説家になろうの功績と言えるかもしれません。がしかし、その反面、優秀な漫画家にまず売れないような原作を当てるという罪も犯してしまっています。
僕がショックを受けたほどに酷い低レベルのオリジナリティ皆無のなろう小説があるのですが、そのコミカライズはかなりの実力のある漫画家さんが担当していたそうです。日本の漫画のレベルは間違いなく世界最高レベルで、その日本で“実力がある”という事は世界最高レベルの実力があるという事になります。世界最低レベルの原作のコミカライズを、世界最高レベルの漫画家が担当しているのです。
あまりにもったいない。
もっと良い原作を当てていれば、ヒット作を出せていたかもしれないのに……。
そのコミカライズ作品は現在は打ち切り状態になっています。あまりに原作が酷いので、これは当然だと言えるでしょう。発売前から予想が付いていました。
僕自身、最近になって漫画を描くようになったのでよく分かるのですが、漫画を描くコストは膨大です。だからこそ、売れないと分かり切っている原作のコミカライズをさせるというのは漫画家にとってあまりに酷で、前述した通り、輸出産業として漫画が重要になって来ている今日では特に、それは社会全体の損失だとすら言えます。
一応断っておくと、良作だからといってヒットするとは限りません(逆に駄作でもヒットする事は有り得ます)。実際、数多くの良作が商業的には失敗してしまっています。しかしそれでも品質が商業的成功と無関係というのもまた考え難いでしょう。
そして、類似作品が多い作品は“売れない”可能が高いのはほぼ確実なのです。誇張抜きで小説家になろうには100作以上もの類似作品があると言われていますが、そういった作品のコミカライズは優秀な漫画家の浪費でしかありません。
せめて、オリジナリティを重視した作品を商業化するという仕組みだけでも作るべきではないでしょうか?
著作権侵害は基本的には親告罪なので罪になっていませんが、もし訴えられたら罪が成立してしまう可能性のある作品が、なろう内では高いポイントを得られているというのは控えめに言っても異常です。
2024年1月に小説家になろうはランキングシステムの改変を行いました。それに僕は喜びました。そのシステムが素晴らしかったからではありません。むしろまだまだ不足していると考えました。ですがそれは、少なくとも“運営が状況改善の為にはランキングシステムの改革が必要である”と認識してくれている事でもあるのです。試行錯誤を繰り返してランキングシステムをより良くしていけば、“優秀な作品”が抽出されるシステムをいずれは構築できるでしょう。
がしかし、小説家になろう運営はそれ以降、目立った動きを見せてはいません(その代わり、既存ユーザー重視に変えてしまったように見えます)。或いは既に諦めてしまっているのかもしれません。
もし仮に、“一発ツモ”で自分達が望む通りの効果を得られるシステムを作り上げられると考えていたのなら流石に甘すぎです。それはどんなに能力の高い人間にとっても難しいでしょう。
YouTubeは動画の品質を保つ為に、システムを比較的頻繁に改変しているのだそうです。
なろう運営も諦めず、ベストなシステム構築の為に努力するべきでしょう。世の中全体の為にも。




