パメラ・ゴードンスミスの場合5
パメラは誰も知らない使用人用の食堂への冒険を諦め、王宮の与えられた部屋で大人しく夜のお茶を楽しんだ。
お湯は部屋付きの侍女ラニアが持って来てくれた。
本来なら飲めない夜のお茶の背徳からか、パメラはその日は中々、寝付けなかった。
そうこうして、専属侍女もパメラがいつも起きる時間に起こしに来てしまった。
時間は早すぎるが、先に身支度を整えて、部屋付きの侍女の訪れを待つ。
登城にかかる時間だけ、待つことになると思われたが、部屋付きの侍女の来訪は予想より早かった。
「おはようございます。ゴードンスミス様」
「おはよう、ラニア。早くから来てもらって、ごめんなさいね」
「いいえ。宰相補佐の方々の来られる時間帯はこのぐらいですから」
部屋付きの侍女に案内されて向かう道順は、どんどん、パメラの知らない地域へと向かっていく。
それは使用人たちが使う建物であったり、区域だったりする。
いくら王宮であろうと、洗濯物というのは出るものだ。シーツであろうと、部屋を与えられている貴族の下着であろうと、洗濯もしなければいけないし、干さなくてはいけない。
王宮から洗濯も、洗濯物が干されている状態も見えては、他国からの来客の失笑を買う。
その為に広大な庭や使用人用の宿舎や施設の建物で目隠しをしている。
見たことがあっても、パメラが入ったことのない区域だ。
知らない道を進んで行くうちにパメラは頬が緩む。
「楽しみね、リリア」
「そうですね、お嬢様」
楽しそうなパメラの声音に専属侍女の頬も緩んだ。
使用人用の食堂は使用人用の建物の一つの一階にあり、女性使用人は宿舎からここまで移動して利用するそうだ。
建物の内部は簡素のように見えて、野暮ったさはない。
利用するのが使用人だけ、ということだけあって、国威を高めるような装飾はないものの、床も壁も掃除が行き届いていた。
使用人用の食堂の中も同様だ。
長机や椅子はシンプルな作りだが、スタイリッシュだ。
朝早いからか、利用している人数も少なく、長机に突っ伏して寝ている者や食事をしている者など、数えるほどしかいない。
――っと、パメラは突っ伏している者がいる長机を見て、速足で使用人用の食堂を出た。
パメラを追って、専属侍女と部屋付きの侍女も使用人用の食堂を出る。
「お嬢様。どうかなされたのですか?」
「リリア。あのテーブルで眠っているのは、ブラッド様のような気がするの」
「「え?! まさか」」
こんな場所にいるはずのない王太子の名前が出てきて驚いた専属侍女と部屋付きの侍女は、出て来たばかりの使用人用の食堂を振り返る。
「ブラッド様だけなら良いけど、ブラッド様の前に座って眠っていた方、昨日、紹介されたバリエイ国の方かもしれないわ」
「え?!! どういうことですか?!!」
「・・・?!!」
専属侍女は訊くだけ余裕があったが、部屋付きの侍女は話の内容に動揺して、声が出なかった。
「どういうことなのか、私が知りたいわ」