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パメラ・ゴードンスミスの場合2

 パメラが15歳になった頃、同い年の婚約者の容姿も子どもっぽさが抜けてきて、また新たな災難が降りかかってきた。

 要は子どもっぽさを愛でる女性は、その趣味嗜好をひた隠しにしているが、成人に近い容姿が守備範囲に入る女性はそうでもない、ということだ。

 それまではまだ何もしてこなかった侍女や女官が、哀れな恋仇を嘲笑うようになったのだ。

 仕事を押し付けてくる時点で婚約者の第二王子に愛着も皆無だったが、嫌がらせも含めたマウントは、パメラの心を更に凍らせた。



 その上、第二王子が浮名を流すようになると、実家も安全な場所ではなくなった。


 父・公爵は「我がゴードンスミス家を馬鹿にしおって! お前は婚約者を繋ぎ留めておくこともできないのか! 身体を使ってでも、浮気を止めさせろ!」


 と、とんでもないことを言い出した。

 閨の教育が急いでおこなわれたが、パメラは到底、それを実践する気が起きなかった。

 代わりに、王宮に与えれている部屋に泊まり込むようになった。

 幸い、夕食は宰相が手配してくれた軽食で済ませることがここ5年続いている。



 専属侍女に着替えを詰めてもらったトランクと共に登城した時には、王宮の部屋付きの侍女に目を丸くされた。


「この荷物はどうなされたのですか?」

「しばらく、王宮に泊まろうと思いまして」

「ああ・・・」


 夕食の時間になっても仕事をしているパメラを知っている部屋付きの侍女は、納得しつつも、憐んでいる声音で相槌を打った。

 宰相に言われて夕食用の軽食を運ぶようになったが、とうとう、第二王子の婚約者も宰相補佐たちと同じように、泊まり込んで仕事をするようになるのか。

 大臣付きの文官はまだ頑張れば毎日、屋敷に帰られる。頑張るの意味は無理をすれば、ということだが、それでも屋敷に帰れるのだ。

 まだ15歳で宰相補佐たちの仲間入りに。

 部屋付きの侍女はパメラが哀れでならなかった。


 と、その時、部屋付きの侍女は良い考えが浮かんだ。


「朝食は王宮で働く者の食堂を利用されてはいかがですか?」

「ああ、朝食が必要だったわね。でも、私が利用してもよろしいのかしら?」


 屋敷から逃げ出すことしか頭になかったパメラは朝食の存在を思い出して、また空腹を抱えるところだったと思った。


「王宮に住み込みの使用人が使う食堂でしたら、宰相補佐の方々も利用されています。ただ、元々は身分の低い使用人が使いますので、それがお嫌でなければ」


 それには専属侍女が異を唱える。


「そんな! お嬢様が使用人に混じって食事をお召し上がりになるなど! 何とかならないでしょうか?」

「夕食の件がございますから、他の部屋を与えられた貴族のように運ばせることは難しいかと。使用人用の食堂からは食事を運ぶのも、目に付きますし・・・」

「あの、×××!」


 専属侍女が思わず叫んだのは、大抵の老若男女が嫌う黒い虫の名だ。パメラの婚約者だとわかる代名詞は使えない為、彼女はこの虫にしている。

 他の部屋を与えられた貴族のように夕食をまだ運んでもらっていた時の婚約者の言葉がパメラの脳裏を過ぎる。「王宮に夕食までたかる気か?」

 婚約者の兄である王太子は決して、このようなことは言わなかっただろう。

 パメラは王太子の婚約者である他国の王女が羨ましいと思った。


 あの婚約者にまたお嬢様が難癖付けられたら堪らない、と専属侍女は引き下がった。


「宰相補佐の方々が使われているなら、安心です。皆様が使われるお時間はわかりますか?」

王太子は『 今日も屋敷に帰れない宰相、王太子を諭す』のブラッドです。

あの件は王太子と宰相の間で闇に葬られたので、パメラは彼がまともだと思っています。そう見えるくらい、パメラにも優しいです。三年経ってもまだ弟は野放しですが。

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