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ジェイコブ・バードマンの場合3

お久しぶりです。完結できるように頑張ります。

 同じような年頃の少年に第二王子を止めさせようとしたら、彼の未来が様々な面で終わってしまうことしか思い当たらなかった。少年の出世が絶たれるだけならまだいいほうで、悪ければ少年の性格を捻じ曲げたり、自殺に追い込む可能性だってある。婚約者の公爵令嬢に仕事を押し付けているのだ。公爵令息でも、被害は免れられない。

 他の文官にしても身分が低いからと、聞く耳を持たないだろう。

 だから、セダム卿は宰相補佐を付けようとしたが、本人たちの辞退が続いて頓挫した。

 頓挫して、バードマンはようやく思い至った。宰相補佐くらいの文官でなければ、第二王子の行動に制限をつけられないと思ったが、それが間違いだと。

 第二王子のことを王族対応していたが、王太子でもないレオン殿下なのだ。スペアではあっても、王太子に余程のことがなければ王位に就くことはない。王太子に子どもがいなくても、レオン殿下の子どもをまともに育てて王太子の養子にすれば良い、とまでバードマンに思われていた。

 王族としてではなく、手に負えない身分の高い悪ガキだと考えれば、対応も変わってくる。


「セダム卿。高位貴族は仕事を一切しなくても、矜持は守れるか?」

「ええ。サインすら嫌がる者がいます」

「執務室が変わっても気にしないか?」

「それは人によるでしょう」

「レオン殿下なら?」

「レオン殿下なら気にすることはありません。今ですら、お忍びに出るのに、時間がかかると愚痴っているらしいです。――まさか、レオン殿下の執務室を移すつもりですか?」

「ああ。今の執務室に行くには国政をおこなう部署があるだろう? メイドを連れ込んでいる今も問題あるのに、令嬢や街歩きで知り合った市井の娘まで立ち入らせるわけにはいかない」

「あなたは何故、そこまで警戒するのですか?」

「最悪を想定して動けば、被害は最小限に抑えられる」

「それは考えすぎでは?」

「今のレオン殿下を見て、ブラッド様のようになると思うか?」

「私の貧弱な想像力に何を求めているのですか」

「私の想像力も似たり寄ったりだ。彼らが問題を起こしそうなら、起こせない環境に置けばいい。第二王子の側近たちが実家で機密情報を持ち出すなら、彼らと彼らの家のセキュリティーの問題にできる。第二王子の過失はまったくない」

「王子の命令でも?」

「王子の命令なら尚更だ。親に相談できる環境にありながら、自分の判断で相談せずに、王子の片棒を担ぐ選択をしたんだ。自分で責任を取るのが筋というものだろう」

「私のことを厳しいと言いながら、あなただって厳しいことを言っていますよ」

「第二王子を諫めることができないのは理解できるが、他の仕事だってしていない奴に、子どもだからと優しくする必要はない。それに、実家から機密情報を持ち出す前に父親の判断を仰ぐことすらしない時点で、子どもでいる権利を放棄している。功罪だけ子ども扱いするわけにはいかない。そうだろう?」

「そうですね。王侯貴族は子どもだからと許される立場ではありません」


 たかがお忍びの外出で怪我を負えば、護衛騎士の首が物理で飛ぶ。煩わしいから護衛や侍女を撒いただけで、撒かれたほうが技量不足として馘首クビになる。

 子どものうちはこの程度だが、己の立場を認識できないまま、成人してしまった王侯貴族は自分だけでなく、多くの者を巻き込む悲劇を招く。


「子どもだから知っていることをポロッと漏らしてしまうなら、口を滑らして困る内容を知らせないようにすることが大人の優しさだ」


 バードマンがそうしなければ、第二王子たちも過去の失策時期に亡くなった高位貴族たちと同じ轍を踏む。公にされていないだけで、ハニートラップに引っ掛かった愚か者は駒としての地位を失い、数として扱われる。

 この国の高位貴族は家名に泥を塗る我が子を、生かしておくことに価値を見出さない。次にどんなことをしでかすのか、それが隠蔽可能か、そこまで考えたくないからである。

 カーディナル卿の妻が訳有りとはいえ、結婚できたということは、家名に泥を塗るような決定的な事実がない、ということだ。

 この国の高位貴族は我が子を見限る時期は早いが、見限るには見限るだけの事実を求める。

 過去のように、ハニートラップに引っ掛かって情報を渡して外交で負けるような場合でも、情報を渡した事実がなければ見限ることはない。

 だが、大概は懇意にしていた相手に逃げられ、意気消沈している為に発覚してしまっていた。


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