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ジェイコブ・バードマンの場合2

「それで、ノミギナナメ国の動きはどうだ?」


 バードマンは小競り合いを仕掛けてくるノミギ国と隣接するノミギナナメ国について、セダム卿に聞いた。

 敵の敵は味方。小競り合いはこちらとしているが、その他の隣接する国の存在を忘れていることが多い。戦争をしている国との境は守りを厚くするが、他の国との境はその分、守りが薄くなるのはそういう理由からだ。

 その油断を別の国が付け込むという、流れを警戒してくれたら、本格的な戦争に発展しにくくなる。


「次は自分たちだというのに、芳しくありませんね」


 他の国を警戒したまま戦争をすることを考えれば、同盟を組んで静観を約束させたのか、それとも、――


「自分だけは大丈夫だという、根拠のない自信があるんだろう」

「今は我が国が仮想敵国でも――」


 仮想敵国――その国と戦争をすると想定して、勝てるように情報や武器、兵力を確保する。だが、スペインの無敵艦隊のような相手を敵と見做したら、勝つ為の準備をしているだけで数百年、経ってしまう。勝てる相手でなければ、仮想でも敵にする意味がない。仮想敵国は、まだ戦争にはなっていないが、これから戦って実際に勝てる見込みのある相手にしか使えない戦争の準備の仕方なのだ。


「既に侵略、受けているんですけど」


 トットハム卿が口を挟んで混ぜっ返す。


「今は我が国が侵略を受けていても、次の矛先が自分たちに向かないと思うとは、お目出度い国だ」

「我が国も充分、お目出度い国ですけど」


 またトットハム卿が混ぜっ返す。

 バードマンは今度はそれを無視した。


「我が国の王侯貴族は侵略戦争を吹っ掛けるより、踏ん反り返って、好き勝手出来る現状で満足しているからな」

「平和と言えば、平和ですけど」


 またまたトットハム卿が混ぜっ返す。


「下手な野心を抱かないだけ、過ごし易い国ですよ」


 セダム卿は王侯貴族の利点を語る。


「なら、面白おかしく、外交をやってもらわなければならないな」

「それが王侯貴族の仕事ですからね。――ああ、そうです。レオン殿下の周辺ですが、ゴードンスミス嬢に任せられる状況ではないので、宰相補佐の中から監視を付けようと思います」

「ゴードンスミス嬢と話すことがあったのか?」

「今朝は朝食を一緒にとった時に、少し」

「朝食を一緒に? ゴードンスミス嬢は王宮に泊まったということか?」

「そのようですね」

「未成年を泊まりこませるなど、何ということだ」


 バードマンはまだ第二王子の婚約者に過ぎない未成年の社畜化を嘆いたが、セダム卿は顔色一つ変えない。


「各部署に業務の移行が始まるので、ちょうど良い時期だと思いますが?」


 仕事の体制が変わる多忙な時期に、業務量が増えても大丈夫な人材が増えたのだと、セダム卿は歓迎しているのだ。


「セダム卿は相変わらずだな」


 そういう男だと、バードマンは受け入れる。いくら言っても、セダム卿は見方を変えないだろうから。


「王侯貴族は役割を果たさなければ価値がありませんからね」


 セダム卿の毒舌も冴えわたる。彼は王族にも高位貴族にも厳しい。

 それは、宰相補佐たち全員にいえることかもしれないが。


「ゴードンスミス嬢に厳しすぎないか?」

「未成年でも王侯貴族は王侯貴族です。下位貴族とは違います。ですが、レオン殿下の側近候補があまりにも仕事をしないことが問題で、そちらの肩代わりを任せる代わりに、こちらで監視しなければならなくなりました」

「トットハム卿、行けるか?」

「嫌だ。おっさんがモテモテ王子の近くに行くなんて、惨めな思いをするだけだ」

「なら、リッチー卿か?」

「え? 私ですか? 妻に疑われたくないので、ちょっと」


 若手の宰相補佐に振られたが、彼は妻に誤解されたくないと拒否した。


「お前、結婚していたのかよ!」

「平民ですから、夫婦、共働きです」


 王侯貴族が楽をする為に、文官は出自を問われなかった。

 平民とは一括りにいっても、村人は早婚だが、メイドや侍女といった使用人は晩婚で、リッチーは早くに結婚したものの、王宮勤めで妻とは一緒に過ごせていない。所謂、名ばかりの早婚である。


「ちくしょう! この裏切り者!」


 でも、トットハム卿にとっては、裏切り者だった。

まともに攻略を考えたら勝てない相手と戦うのは博打です。ドレーク提督はその博打に勝って、大英帝国の繁栄が始まりました。

そういえば、織田信長も桶狭間の戦いで勝ちましたが、こちらも賭けにならないほどの大博打でした。

今川義元は海道一の弓取りでしたし、義元の息子も剣聖だったのに、他が華々しくて、今川家は目立たないんですよね・・・。と、今川焼を食べるたびに思います。

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