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フレイヤ・スケリット 2

 お金を払えば男爵になれるというものではないらしい。礼儀と品がいると叔父は言うけれど、どちらか、もしくは両方が欠けた爵位持ちなんていくらでもいるとフレイヤは知っている。


 内心大笑いしてしまっても、淑女風の笑みを浮かべる。そこは元男爵夫人ですもの。



『叔父様、お話の要領がつかめませんわ』


はっきりおっしゃって。


 叔父の説明によれば、簡単な身辺調査をしたところ、ラング・ルウェリンが十歳にも満たない女の子を物色しているという聞き捨てならない噂が聞こえてきた。それも「信頼できる筋」から。



『叙爵を邪魔してやろうという中傷では』


 田舎まで出掛けるのが面倒で、思いつきを口にするフレイヤに叔父も頷くところをみると、噂を信じたわけではないらしい。


『報告された以上、調べる必要がある。そこでだ、君をこの件限りの特別調査員に任命する。表向きは花嫁候補としてルウェリン家に滞在して、彼の身辺を探って欲しい』 



お断りしたい、できるものなら。


『どうします? 意気投合して私が奥方におさまってしまったら』


困らせてやろうと思ったのに、にこやかな笑みが返される。


『それならそれで、いいじゃないか。フレイヤ・スケリット・ルウェリン男爵夫人。文句なしに叙爵しよう』

『素人がしばらく滞在したくらいで分かることなんてないと思いますけど』

『いいんだよ。噂を放置して後で問題になる事を避けるための形式的な調査だから。彼が品位に欠ける人物なら申請を却下。仮にフレイヤが騙されたとしても、真実が分かった時には期間限定調査員の君はもう調査員じゃない。責任を追求することはないよ』



叔父様、どうしても行かせるつもりでいますね。


 成功報酬ではなく日当でいただきたい。危険な目にあったら自己申告制で危険手当をつけてください。

旅行に必要なあれこれから交通費などかかる費用は、叔父様持ちで。


『もちろんだ』『他には?』『かまわないよ』


 出す条件すべてを、官僚らしい微笑で受け入れられ、フレイヤは仕方なく『お引き受けします』と返したのだった。








「まさか。本当に女の子がいるとはね……」



 秋に来たフレイヤは持病の神経痛が出て馬車旅が辛い。暖かい春までここに滞在する――ということにした。


 押しかけ花嫁候補に露骨に迷惑そうな顔をしたラング・ルウェリンも、官僚として名の知れた叔父を持つ女を粗雑には扱えない。

「どうぞ、お好きなだけご滞在ください」となった。


 

 女の子がいるといえばいる。でもよくよく気をつけていると住み込みの使用人の子供。お手つきにしているかどうかまでは分からないが、フレイヤが見る限りただの田舎の子でしかない。


だからティナちゃんには、本当に驚いた。


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