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アンディが行き倒れた理由

アンディの事情は、先にジェシカが聞いていた。



 アンディの母は夫を早くに亡くし、ひとりでアンディを育ててきた。そしてこの度めでたく再婚することとなった。


 母共々引き取り養子縁組をしてくれると言うのに、アンディは新しい父を嫌い「ひとりでやっていける」と家出をしたらしい。



「もう三年たてばそれもいいだろうけど、あんたまだ十歳だろう?」

ジェシカが口の端を下げて続ける。

「詐欺師から見たら、いい鴨だ」


 アンディの悔しそうな顔の意味が分からない。クリスティナに説明してくれるのはジェシカだ。



 家からお金を持ち出して、年齢を偽って隣町の職業紹介所で仕事の斡旋を頼んだアンディに、ちょうど行き合わせた男が声を掛けた。


「衣食住つきの座り仕事が他領にある。まだ人を集めているから一緒にどうか」


 よい話は怪しいけれど魅力的。アンディは、まず共に食事をして男の人となりを観察した。

話し方はきちんとしていて愛想もいい。さっきの職業紹介所でも所員と慣れた感じに話していた。


 あそこで紹介された仕事に違いない。この男と行けば紹介手数料を払わなくて済む。


「行くまでにかかる金は俺がまとめて払っておいて、雇い主にもらうから心配いらないよ」


アンディは決心して男に同行することにした。



 クリスティナにはそこから行き倒れになる理由がまだ分からない。


「楽しく旅をしていたら、ある朝男がいなくなってたんだってさ。アンディの荷物を全部持って――どろん」  

「ぜんぶ!」


 クリスティナのびっくりした顔を眺めるジェシカは、笑いを隠さない。


「驚くことじゃないよ、クリス。紹介所で声をかけてきたとこから、よくある手口さ。まだひっかかる奴がいるんだねえ」



「『全部』じゃない」

不機嫌な声が否定した。


「ああ、そうだった。寝るときも履いてた靴下のなかの金と腹巻きに入れてたぶんは残ったんだったね。良心的な盗っ人もいたもんだ、あんたはやっぱり運が良い」


 ジェシカの誉め言葉にアンディの機嫌が見る見る降下する。

慌ててクリスティナは質問した。



「それで、どうしたの?」

「宿代を払って、亭主にアイツの行き先に心当たりがないかを聞いた。そしたらこっちの方は復興の最中で良くも悪くも人が集まってるって言われたから」


 確かに。出稼ぎに来ている男は多く、その人達相手の商売や店が増えているのは、クリスティナも知っている。

それを狙うのがオヤジと野郎どもだから。


どちらかと言えばアンディを騙した男と同じ側の人間だ。


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