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贈り物

 薬草園も野菜園も植物園も、庭師が管理している。正直子供がちょろちょろするのは迷惑なんだろう。


 「そのへんで花でも摘んでろ」と言われた。冬だから小菊くらいしかないのに。

 

「おじさん、どれを摘んでもいいの?」

「ああ」


 子供が摘むくらいしれていると思っているのだろう、雑な返事だ。


 でもクリスティナはまったく気にしない。いいことを思いついたから、好きにしていいのは都合がよいのだ。



 借りた小刀を使って薄紫の花のついているローズマリーを何本も刈る。それに白い小菊を合わせて小さな花束を作り、拾った荒縄で括る。

本当は色のついた小布を裂いて作った紐が欲しいところ。ないのが残念である。



「うまいもんだ」


 庭師は作業の手を止めてクリスティナのすることを眺めていたらしく、感心して言う。


「まあね」


 だって商売にしてたもの。褒められたのが得意でお鼻がぴくぴくしちゃう。手の甲でそっと鼻を押さえて隠した。




 遠回りになるが、使用人食堂へ行くのに中庭を通っても行ける。クリスティナはここと決めたベンチに花を置いた。




 残念ながらお姉さんはクリスティナの贈り物を持っていってくれなかったらしい。

 翌朝起きてすぐにベンチを見たら、花束は置いたままの場所にあった。


 とてもがっかり。窓枠に頬杖をついてクリスティナは、大きく息を吐いた。


 お姉さんとお友達になりたい。まずは私がいることを知ってもらおうと思ったのに。


「ぐにににににに」


 不満な時のぴぃちゃんを真似してみる。少し気分が持ち直した……かもしれない。


「ぐにぐに言ってても、お友達にはなれないもんね」


 行動あるのみ。一度でくじけちゃだめ。

それにローズマリーの香りが嫌いだったってこともある。今日は別のお花にしようと思った。






 

 ローズマリーがだめなら、香りのないものに。花はなくても赤い実が可愛いヒイラギをまとめたなかに、お手紙を入れた。

「ティナ 九歳になったばっかり」


 これなら別の人が見つけても「私のだって分かるようお名前を書いておいた」と言えば「そうか」と思ってもらえるはず。



 

 そして次の朝、ヒイラギの束はなくなっていて代わりに白いハンカチがあった。

食事に行く前に走って取りに行く。


 階段の陰に隠れ、どきどきしながら広げる。手紙はなかったけれど、赤い糸で縫い取りがしてあった。


フレイヤ・スケリット


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