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ラング・ルウェリン

 クリスティナの連れて行かれた先にいたのは、ガッシリとした体格の男性だった。

髪の色ははうるちゃんと同じで瞳の色は黒。さすがに白目が金色ということはないけれど、屋号を狼とするのもなるほどと思われる。

ご当主様ラング・ルウェリンは、この方だ。



「名は」

「シンシア・ティナです」

「シンシア・マクギリス、ではなく?」


気に入らないのか、声が低い。


「シンシア・ティナと呼ばれていました」


 シンシア・マクギリスと自分で名乗るのにはためらいがある。



「どうだ」

これはクリスティナにではなく、部屋にいたもうひとりの男性に対しての質問だった。


「瞳の色はマクギリス伯とよく似ています。伯の髪色はよくある色ですから、この娘が同じでも特徴とは言えません」


 丁寧な返答は、答えた男性の地位がご当主より低いことによる。

彼が地位の高い使用人だ、とクリスティナに分かるのは、小さい頃に城砦で暮らしていたから。



「使えそうか」

「歳は同じくらいに見えます」

「しばらく置いておけ」



 同じくらいの歳とは誰と。シンシアお嬢様とだ。

「しばらく置いておけ」と言われたから、おじさんは無事残りのお金をもらえそう。

 クリスティナをよそに別の話題に移ったので、こっそりと室内を観察する。



「こんな本を持っている知識人ですよ」と示すための本棚があるところを見ると、ここは人と会うための仕事部屋だ。


 入ってきた扉の上には、剣が二本掛かっている。刺されたらいかにも痛そうな細い剣は、クリスティナのいたお城ではあまり見ない形で、珍しく感じる。



「剣に興味があるのか」


 掛けられた言葉が自分向けであると気がつくのに時間がかかった。


「剣を習いたいか」


 ここでようやく気がついた。剣を眺めていたので、そう思われたらしい。


「いいえ。たぶん上達しないので」


 お金をかけてもらうだけムダ。

やってみたければ野郎どもも教えてくれただろう。

 いいようにやられるアンディを見なければ、してもいいと思ったかもしれない。

アンディより小さいクリスティナでは最初から負けが見えている。



 その点、ルウェリン様の体格はうってつけだ。胸の厚みや首から肩の盛り上がりが素晴らしい。鍛えてもなかなかこうはいかない。



 クリスティナの視線が不躾だったようで、ルウェリン様が疑わしげな顔つきになる。


ここは率直に褒めればいいだろう。


「いい体してるなあと思って」


 酔っ払うと脱いで筋肉を自慢していた野郎どもを懐かしく思い出し、クリスティナはうふんと笑った。


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