表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/304

狼のはうるちゃん・4

 ばか狼。謝らなくていい、私「いいよ」なんて言わないから。


 クリスティナは心の内で悪態をつきながら、元の大きさに戻ったぴぃちゃんを桶に入れて、湯を手ですくってはかけていた。



 もらって時間のたったお湯はとてもぬるく、クリスティナが自分の足まで洗ってしまった後なので、綺麗とは言いがたい。それでもヨダレまみれよりはいいと思い、丁寧に洗う。


 はうるちゃんのヨダレが無臭だったことだけが救いだ。ぴぃちゃんが臭くなったら、泣けてきちゃう。



 ぴぃちゃんはお湯が気持ちがいいのか、うっとりと目を閉じている。もう汚れはとれたからお湯から出てもいいけれど、もう少しぽちゃぽちゃすることにする。



 はうるちゃんは少し離れたところで、堂々と座っている。神妙にしているだろうか、と横目で様子を窺うクリスティナと目が合うと「ふっ」と笑うのが、いけ好かない。


「そんな怒んなよ。ちょっとからかっただけだよ。ごめん、ごめんて」とでも言っている、きっと。 



「ちょっとお顔がいいくらいでおごってると、いつか痛い目に合うんだからね」



 親切にも教えてあげる。これは「武勇伝」とやらを語る野郎に、ジェシカ母さんが言っていたこと。

 ヒゲがあるからみんな同じお顔で誰がかっこいいなんてない、と思っていたクリスティナは、おヒゲのお顔にも良し悪しがあることを初めて知ったのだった。



ぴぃちゃんが薄目を開けてこちらを見る。


 ぴぃは怒ってない、はうるちゃんは会うといつもこんな感じだから。

 理解はこれでだいたい合っているだろう、でも。



「そうやって皆が甘やかすのがダメなの」


 クリスティナがぴしゃりと言うと、ぴぃちゃんが萎んだ。

あれ、被害にあったぴぃちゃんがしゅんとなるのはなにか違う。



 はうるちゃんから、とりなす気配が漂う。大人の余裕を感じさせる大物感はいったいなに。


「ぴぃに当たんな。悪いのは俺だろ、当たるなら俺に当たれよ」だとしたら。



「だから! 悪いのは、はうるちゃんでしょっ」



 オヤジによく似たまったく反省の色のない狼に向かい叫ぶと、狼は「おいおい、大声だすなって。狭い部屋なんだ聞こえてるっつうの」というように、首をすくめた。



今すぐこの狼に勝てる熊を探しに行きたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
取り敢えずぴぃちゃんが無事みたいだから良いけど、はうるちゃん、はうるちゃんって呼ぶほど可愛くない! (クリスティナの翻訳によれば、)オヤジや野郎どもみたいに強がってみたいマウント野郎みたいだけど、全然…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ