初めてのお友達 アンディ
行き倒れ少年の髪色はアッシュブロンドという色だと、母さんが教えてくれた。
今は見えない瞳の色はどんなだろう、早く目を開ければいいのに。
寝かせた部屋にわくわくしながら何度も出入りするクリスティナに、みんな呆れてなにも言わない。
少年は、顔と手足の汚れをジェシカが拭いても、洗濯してあるシャツに着替えさせても目を覚まさなかった。
体に目立つ傷はなく、どこからか逃げ出したにしてもそう悪い奴らからじゃない、と大人達が話していた。
クリスティナは「そう言うこっちが山賊なんだけどね」と口を挟みたい気持ちを我慢した。
自然に起きるまで寝かせてやれと言われても、待てない。
「早く起きないかな、ねえ起きて。起きようよ」
待ちきれなくて、男の子の体を揺さぶる。
眠そうな「あ」とか「う」が返るだけで、まったく起きない。
目が覚めたらすぐのすぐお友達になりたい。クリスティナは顔の見える位置で見張ることにした。
見張るつもりが眠ってしまって寝ている間に運ばれたらしく、クリスティナが目覚めたのは自分の寝台だった。
ジェシカ母さんはとっくに起きて朝の支度をしている。寝るときも昼間と同じ服を着ているから、このままで平気。急いで台所へと行けば、ジェシカの話し声がした。
「とんだ甘ちゃんだねえ」
「……」
野郎どもの朝は早い。みんな狩りだの野良仕事だのに出たあとで、食卓についているのは見慣れない男の子ひとり。
「おはよう、クリス七歳!」
最初のご挨拶が大切だと元気よく名乗ると、男の子は驚いたらしく目を見張る。
昨日から見たくて仕方のなかった瞳の色は深い青色で、クリスティナの初めて見る色だ。
「そら来た。この子はあんたの命の恩人だよ。あのまんま朝まで寝てたら、最悪、獣に食われてたかもしれない。自分の強運に感謝するんだね」
男の子が椅子からおりて、クリスティナに頭を下げる。
「ありがとう」
「そんなのいいから、名前を教えて」
運んだのは力持ちのベンジーで綺麗にしたのはジェシカ母さんだから、私にお礼はいらない。それより名前。
「アンディ、十歳です。本当にありがとう」
戸惑いながらも教えてくれた。
「ねえ、なにが『甘ちゃん』なの?」
ぐっと身を乗り出して顔を近づけたクリスティナから半歩退いて距離を取るアンディ。
見ていたジェシカの笑い声が響いた。