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不安の先・1

 シンシアお嬢様は金髪、クリスティナの髪は黄色っぽいけれど茶色で金髪と言い張るのは厳しい。

それより違うのは目の色。お嬢様はたしか緑色、クリスティナは緑と無理やり言えば通らなくもないかもしれない、くらいの黄みがかった薄茶色だ。



 アルバ夫妻の見送りを受けて、おじさんと馬車に乗り込んだクリスティナは、思いつく限りのことを考えていた。


「目の色が違うのはいいのか」と尋ねそうになって、はたと気がついてやめた。

そのへんの子供がシンシアお嬢様の目の色を知っているなんて、おかしい。言う前でよかった。



 色々質問したら絶対ボロが出る。これは口をつぐんでいるのが利口だと思ったのは、向い合わせの席、おじさんの隣でぴぃちゃんがクリスティナを見張っているから。


 長距離飛行が疲れるので馬車で移動することにしたのかもしれない。



 クリスティナが質問しようとしたら、両の翼を顔の前に持ってきた。

「臭い臭い」で合っているかと唇の動きで聞いたら、今度は翼で器用に横線を引く。

それで「おだまり」だと分かった。



 目を閉じてうたた寝をしているおじさんの隣で同じように揺れているぴぃちゃんを見ながらの馬車旅は二日らしい。



 アルバさんとおじさんとのやり取りに聞き耳を立てて知ったのは「シンシア・マクギリス」を探している人がいること。


 自分がシンシア・マクギリスだと信じている女の子ならいいらしい。他にも自称シンシア・マクギリスがいるというから、驚きだ。



 なかに本物のシンシアお嬢様がいたら、私はどうしたらいいのだろう。

行く先がお城を攻めたハートリーかウィストンでなければ、シンシアお嬢様が殺される心配はないのか。


 お嬢様のお命が危ないなら私が代わりにシンシアお嬢様になる。お嬢様を助けてくれるつもりで探しているなら譲る。そう決めているけれど、大人は上手に嘘をつく。嘘を見抜く自信なんてない。



 頭のなかがぐるぐるして気持ちが悪い。口元を両手で覆うと、ぴぃちゃんがクリスティナの膝に移った。

心配そうに見上げてくる。



「大丈夫、ちょっと緊張してるだけ」


微かな声でも聞こえるぴぃちゃんは、すごい。そしていつもかわいい。



 そういえば、おじさんが言うには、クリスティナの話し方にはほんの少し地方の訛りがあるのだそう。

その加減がお城にいる人風で、いいらしい。


 考えてみればジェシカ母さんとオヤジも、町の人とは少し違った。町の人は濁って聞こえることがあるのに、それがなかった。



「みんな、どうしてるかな」


 ぴぃちゃんが小首を傾げるのは「みんな?」だ。


「うん、みんな」


 ジェシカ母さんとかアンディとか、ウォードとか。

ずいぶんと遠い所へ来てしまった、と思った。


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