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ハートリー家の若様付きブレア

 ウィストン伯爵の居城においでのハートリー家当主に子息ウォードからの手紙を届けたブレアは、長居せずに城を発った。



 「ウィストン伯は子息に厳しい」と言われる根拠は、規律を乱した息子を即座に切りつけたことによる。

子息が避けなければ殺されていたと、見てきたように語る者もいる。


 居合わせたブレアにしてみれば、作り話もいいところ作り話だ。




『失望したわ』

 吐き捨てて剣を振り上げたご当主の姿は、今でも目に焼きついている。


 威圧されて怯える息子は身動きひとつできない。そう信じていたのだろうが、大きな誤りだった。

子供はいつまでも泣くばかりの子供ではないのだ。



 「謝ればいい、すぐに頭を下げればお許しになる」と助言しようと思い飛び出したブレアは、血に染まったスカイグレイの瞳が凪いでいるのを見て、言葉が出なくなった。


 自分の行動を後悔していなければ、暴行した父に対する怒りもなく、驚いてもいない。



 その目つきは、さらにご当主の怒りを高ぶらせる。とっさに持ち合わせの布で表情が隠れるように傷口を押さえた。


 父と同じアッシュブラウンの髪が血に塗れて額に貼りつく様は、浅い傷でも頭は出血量が多く見えると知っているブレアですら不安になった。


『俺が悪い』

冷静な声を部屋の隅々にまで響かせた若様は、贔屓目でなくとも御立派だったと思う。



 あの時無断で持ち場を離れた理由を何度尋ねても、曖昧な微笑を浮かべてはぐらかされた。


 今回、山賊の子供を気に掛ける若様に、理由を問いたい気持ちが皆無とは言わない。

が、無理に聞き出せば重ねた信頼が崩れるように思う。


ブレアには、ご当主より若様が大切だった。

 







「この子供が『クリス』ですか」


 困惑を隠せないブレアの前にいるのは、黒髪を短く切りそろえた男の子。どこをどう見ても山賊の子クリスとは別人だ。


「他に最近来たクリスという名の子供がいませんか。髪は淡い茶色で線の細い」


神学校の職員は、ゆるゆると首を横に振った。


「先ほどお尋ねになった、ふたりの男性に連れられて来たのは確かにこの子です」

「はい、僕です」


 促された少年もハキハキと同意する。嘘をついている様子はない。



 どういう事だ。山賊の息子はどこへ消えた。若様はこれを危惧していたのか。


ブレアは血の気が引くのを自覚した。



スカイグレイ→少し青みがかった明るい灰色



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