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山賊の娘 クリス

 山道にボロ布の小山が見える。クリスティナは知っている言葉のうちから適切なものを選ぼうと頭をひねった。


「見て! 行き倒れ!」


 振り返って、すぐ後ろを歩いていたジェシカにこれで合っているかと伺いを立てる。



 二年前、クリスティナが五歳の頃、この地の支配者がマクギリスからウィストンへと代わり、仕事や家を失った人々の混乱は今なお続いている。


 そしてこの山は山賊が出ることで有名だ。

商人達は慣れたもので、抵抗せず要求された金額を渡す。護衛を雇うほうがかえって高くつくし、雇った護衛が賊の仲間だったら意味がないからだ。




「商人達が払う金は、山の維持管理費。俺はそれを預かって活用してるだけ」などと豪語するのは、クリスティナの「オヤジ」。


 オヤジの妻であるジェシカは「おっかさん」、クリスティナは「山賊の子クリス」だ。


 一家は朽ちかけた古い狼煙台のついた山城をうまい具合に改修し「野郎ども」と呼ぶ仲間と暮らしている。


 同居している「家族」は両手の指の数くらいで、出入りする人数ならもっと多く、クリスティナには数えきれない。



 地形を覚えたほうがいいと、ジェシカ母さんが山菜取りがてら連れ歩いてくれるのは、クリスティナの楽しみのひとつだ。



「クリス! 分からないものに不用意に近寄るんじゃないよ」

「でも、子供よ」


 ジェシカの注意を聞かずに、ボロ布を身にまとった人の隣にしゃがみ込む。



 固く瞼を閉じていても、肌のつるりとした少年であると分かった。

クリスティナの脇から見下ろしたジェシカも同意する。


「へえ、綺麗な子じゃないか」


ひらめいた。

「ね、拾っていこう」


 春には山菜や果物、秋には木の実やキノコ。山は恵みを与えてくれる。この子も山の恵みのひとつだと思う。


「拾うって……軽々しく言うけどね」

「このままにしたら、誰かが連れて行っちゃう。拾って帰って私のお友達にしよう」



 家には空いている部屋がある。古くて汚いけど、この子もボロボロだから気にしないと思う。クリスティナはジェシカの手を握って力説した。



「分かった、分かったよ。私はここで待ってるから、誰か男を呼んできな。運んでもらおう」


仕方がないという顔でジェシカが譲る。


「うん! 待ってて」


やった、お友達ができる。今までで一番早く走れそうだった。


 

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