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別れの気配・2

 暖炉の前にはカラスのぴぃちゃんがいる。最近仲良しになった美猫(仮称にゃーごちゃん)も暖炉が好きで、焦げそうなくらい火の近くに丸くなっている。そのうえに乗るのがぴぃちゃん。


 クリスティナににゃーごちゃんが見えるのは、ぴぃちゃんがクリスティナかにゃーごちゃんにくっついている時だけだと気がついたのは、しばらく前。




 騎士四家の本を開いている時に「これ、これがぴぃちゃんです」と、似ていないカラスの絵をぴぃちゃんが脚でタシタシとした。


「え、これぴぃちゃんって言った? 実物のほうがずっとかわいい」


 感想に気を良くしたらしいぴぃちゃんは、クリスティナ肩に飛び移るとほっぺに頭を押しつけてきた。

可愛いし気持ちよくて、うっとりしちゃう。柔らかな毛を堪能していると。



 下方より見上げる熱い視線。「こっちを見ろ」とばかりに美猫が前足を猫の絵に置いて、クリスティナに圧をかけてくる。


もしかしてこの似ていない山猫は。


「この灰色の猫がにゃーごちゃんだなんてことは、ないよね。だってにゃーごちゃんは山猫っていうより猫神様って感じの神々しさだもの」


 美猫の目が細くなる。喉を鳴らしているようにも感じられる。



 本に載るような有名なおふた方が山賊の家なんぞに来てくださったとは、畏れ多くて震えちゃう。

クリスティナはこれまでの失礼を取り返すべく褒めに褒めることにした。


「にゃーごちゃんも実物のほうが百倍かっこいい。こんなキレイなお猫様がうちのぴぃちゃんと仲良くしてくれるのは、とても嬉しいです。ありがとう。これからも仲良くしてください」



 先まで艶つやの尻尾が小気味よい音を立てて床を打ち、クリスティナに両目でウインクする……たぶん。


「ぴぃちゃん、良かったね。お友達できたよ」


 ぴぃちゃんは無言。気のせいかもしれないけれど、拗ねているみたい。


「わかるよ、にゃーごちゃんは良い子だけどハートリー様はやっぱりちょっと……。でも会ったこともないハートリー様より、一緒に遊んだにゃーごちゃんの気持ちを大切にしよう」


 首を傾げて聞いていたぴぃちゃんも、落とし所を見つけたらしい。にゃーごちゃんの元へ戻りふたりでなにか話している。



「『そういえば、ずるちゃんは?』『最近会ってない』『あ、にゃーごちゃんも? ぴぃも会ってない』『元気してんのかな』『ね』『じゃ、にゃーごちゃん。はうるちゃんは?』『あっちはもっと会ってない』『あ―、ぴぃも』」


 こんな感じかと内容を推察して吹き替えするクリスティナを、二匹が同じ表情でじっと見る。

どうやら全然違ったらしい。クリスティナは顎だけ動かして謝罪した。




「シンシア・マクギリスを知っているか」と聞かれた今も、暖炉の前には二匹がいる。


 どうしよう、ぴぃちゃん。助けを求めれば助言をくれることは分かっている――人の言葉を話さないので、こうかなと思うしかないのだけれど。


 でもウォードのこの問いには自分で考えて答えたい気がした。


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